きっと其の四十三 ページ43
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転属してから早くも5日が過ぎ、こちらの業務にも少しずつ慣れ始めた頃、Aに新たな任務が与えられた。
「諜報活動…ですか……」
「嗚呼。是非お前に頼みたい」
中原に"是非"なんて言葉を遣われてしまっては断るも何もない。というか抑々部下なんだから命令すればいいのに、中原はいつも、Aには『頼み事』として任務を云い付けていた。
「承知しました」
「詳しい事はコレに書いてある。よろしくな」
「はい」
諜報活動というか、平たく云えば潜入捜査だ。
明日から2週間、研修生を装ってと或る企業の内部調査をする。社員寮の空き部屋を使わせてくれるという話らしいので、其処で2週間過ごすことになるそうだ。
今回潜入する企業は【ヨコハマ・シルク運搬】という会社で、同じ法人の織布商事専属の運搬会社である。
故に、シルク運搬自体は小さな会社だが、その親玉となる所は大きい。
何しろ、名産品であるスカーフの生産率と売上高がこのヨコハマ最高の商事だ。
シルク運搬が1回動くだけで、何千万と金も動く。
そんな大企業に我らがポートマフィアが目を付けないわけもなく、森さんが首領になった頃から懇意にしているらしい。
というわけで、マフィアも幾らか輸出入をシルク運搬に頼っているのだが……最近どうも納品書と品物の数が合わないことが増えてきた。
以上が今回私が潜入捜査をするにあたった理由だ。
明後日の入寮に向けてこれから準備やら何やらしなくてはならないし、それなのにまだやらなくてはいけない他の書類がいくつかある。
今日中に全て始末しなくては。
「よしっ、やるか」
そう呟いた名前の髪には、綺麗な朝顔が咲いていた。
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時