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きっと其の四十二 ページ42

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「A、居ないのか?」

電話にも出ない、直接部屋の扉をノックしても出て来ない。
勝手な事をしてもよいのか少し躊躇ってからドアノブに手を掛けた。

「A……って、オイオイ……」

そこで見たのはポツンと佇む文机に寄りかかって寝息をたてるAだった。
傍らには半開きのダンボールが据わっている。

転属早々風邪を引かれても困るし、起こすべきかとAの目の前に屈むと、彼女の頬に涙の痕を見つけた。

___泣き疲れてうたた寝ってか…?


「A、おい、A。起きろ、風引くぞ」
「んん……」

小さく聞こえた吐息に、不覚にも胸が鳴る。

「……幹部…?……えっ、中原幹部!!?」

あまりにも驚くものだから、Aの後頭部は文机にぶつかり鈍い音をたてた。
「っ〜〜〜〜」と言葉にならない程度には痛いらしい。


「ハァ……大丈夫か?」
「大丈夫です……すみません……」

そして立ち上がる時に蹌踉(よろ)めいてまたぶつかるのだった。本当に大丈夫か、此奴。
抑々何故泣いていたのか気になったが、それを切り出すことはできなかった。

「幹部は何故此処に…?」
「いや部屋の移動もあるし、何か手伝おうかと思って電話したんだけどよ…」
「えっ」

ハッとしたAがポケットから携帯端末を取り出すと、その画面には『2件の不在着信』と表示されていた。Aの顔からサーッと血の気が失せ、続いてスミマセンと連呼する自動機械化した。

「そういやお前、寝言云ってたぞ」と揶揄(からか)うと次は顔を赤くしながら、これまたスミマセンを繰り返す。


「プッ……冗談だよ」
「なっ……幹部、そういう所ありますよね」
「悪い、何かつい揶揄いたくなンだよ」

笑いながらそう云うと、Aは困ったように「そうですか……」と溜息を吐いた。


「…改めて、これからよろしくお願いします。中原幹部」
「おう、よろしくなA」



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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時

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