きっと其の二 ページ2
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「…は、幹部、何を云って……」
「そのままの意味だ。…いいから早く乗れ」
「ええ…」
何故私は今、あの中原中也の車に乗っているのか。神様はどうも私の血液循環を促進させるのが好きらしい。お願いだから大切なヘモグロビンたちを虐めないでくれ、可哀想だろ。
最早自棄糞になり、意味不明な事を考えていると、車が発進した。
目的地不明。運転手は異性。しかも組織の五大幹部。
私の凡庸な思考回路を停止させるには十分すぎる条件だった。
「あの…幹部…何処へ?」
「テキトーな所だ。…チッ、矢ッ張り追ってきてやがる」
「追って…?敵襲ですか?」
「下手すりゃそれよりタチが
敵よりタチが悪い追手となれば、後は
己の推察が合ってるか確かめるべく訊いてみると、矢張りそのようだった。
車は暫く走り続けたが、後続車は何時までも変わらず追いかけてくる。それをミラーで確認した中原幹部は壮大に舌打ちをして、ハザードランプを点けた。そして海岸沿いに停車させると、『降りろ』と云ってドアを開ける。私も云われた通りに助手席から降りた。
「…あの、幹部?」
「莫迦、名前で呼べ」
「何故…あぁ……中也さん?」
私は漸く気付いた。
自分は今、中原中也の恋人"役"をしなくてはならないのだと。
恐らく、少し離れた位置に停まった車の主__
それにしたって、端からそう云っていただきたいものだ。
中原幹部はグイッと私の手を引くと、そのままソッと抱きしめた。一瞬にして頬が熱くなるのが判る。
マフィアという裏社会に身を投じて以降、異性と此処まで密着する事などなかったし、相手はあの中原中也だし。嗚呼、また私のヘモグロビンたちが……
「……ふぅ…やっと消えたか……オイ、何時まで固まってンだ」
「いや…あ…すみません」
急に抱きしめておいて無理云うな、あくまで心の中で悪態をついた。
「悪かったな巻き込んで。送ってやる」
「いえ、私、今日は拠点に泊まるつもりなので…」
「何だ。なら丁度良いじゃねえか。俺も今日はそのつもりだ」
再び車に乗り込んだ私達は、来た道を逆に辿ってポートマフィアの拠点へと向かった。
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時