重力、夢中力【文豪ストレイドッグス】【中原中也】

(28)不機嫌 ページ31

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「……おい」


『……(ﾑｽｯ)』


「おい！何むくれてやがる」


『……別に』



俺が帰ってきてからずっとこんな調子だ。
若しくは俺が帰る前から。



約10分程前。

任務を片付けて執務室へ入った途端に目に入ったのが机に突っ伏したAの姿。

そういえば2人で使う事になったのかとAが居てその机が有る事に納得していると、その突っ伏したAの横に書類が積んである事に気付いた。


やる気が無いように見えながらも、課せられた仕事はちゃんとこなすAにしては珍しい事だった。

最初は「そのうち起き出して遣るだろう」と俺も思っていたが、一向に其の気配が無いので声をかけた所で冒頭に戻る。



「まァた"別に何でもない"って云うのか？」


『本当に何でもない』


「じゃあ何で不機嫌なんだよ」


『不機嫌じゃない。ほっとけ莫迦』


「っ〜!!! 嗚呼そうかよ、ほっとくよ」



本当に此奴は可愛げの無ェ女だな…!!

心配し……一寸…ほんの一寸だけ心配して云ってやってンのに！



「………」


『………』



続く沈黙。


俺だって遣らなきゃならねェ書類が山ほどあるってのに全く集中できない。



『…ﾊｧ……』


「………」




溜め息吐きたいのは此方の方だ。





「…なぁ、本当に何があったンだ？如何しても俺に云えねェ事か？」



椅子から立ち上がってAの傍へ寄る。



『…判らない』


「何が」


『云って良いか判ンない…』



小さい声だが辛うじて聞き取ることができた。

云って良いか判らないって……



「何をだ」


『その"何"が云えないって云ってるの』


「また新しい任務か？」


『もうほっといてってば！』



そう一言怒鳴って、Aは執務室を出ていってしまった。





「………理不尽だぞ莫迦野郎！」

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