重力、夢中力【文豪ストレイドッグス】【中原中也】

番外編＊夢のレパートリー ページ34

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ある日の昼下がり。

猛暑の中外へ出る気にもならず、中原とAは執務室で昼食を摂っていた。


ふと、中原がAに訊いた。




「前から思ってたんだけどよ、異能で見せる夢ってどうやって決めてンだ？」


『え？どうやってって？』


「幾つか選択肢(レパートリー)作ってあンのか？それともハッタリか？」



『そのへんは気分によるね。でもまぁ幾つかイメージパターンはあるよ』



そう云って素麺を啜った。

今日もAはコンビニ物なのだろう。器は薄っぺらなプラスチックだ。

中原も唐揚げを頬張った。



「へぇ。例えば何だ？」


『今食事中だけど良いの？』



何やら意味有り気な言葉である。



「教えてみろ」



後にこの言葉を後悔する事になるとは、現時点の中原は毛程も思っていなかっただろう。



『じゃあ教えてあげよう』


箸を置いて頬杖をつきながらAは口を開いた。



『目が無い猿に腸(はらわた)を抉られる夢』


「ｺﾞﾎｯｺﾞﾎｯ、！最初からエライのきたな」


『だから良いのって訊いたじゃん』



飲んでいたコーヒーを吹きそうになり噎せる中原。

原因となる発言をした本人は平然とした顔で菓子パンの袋を開けている。
今日は新作のチョコメロンパンだ。



『あとは主に妖怪絡みの夢かな。私怪談好きだし』


「初耳だぞ…」


『え？いつも此処で読んでるけど』


「手前いつも本にカバー掛けてるだろ」


『嗚呼、そっか』



最近は西洋の怪談にも興味があるというA。

そういえば最近、整頓されたAのデスクに英和辞書が出ている事を中原は思い出した。



「西洋の怪談っつうとアレか、吸血鬼(ヴァンパイア)とかか？」


『そうね。あとは狼男(ウルフマン)や死神(キラー)…』


好きなだけあって随分と詳しい。



『だから最近よく使うのはそのへんだね』


「ほう。命刈られる夢か」


『そう、首ごとね』


またもや中原は言葉を失った。



「少しは楽に逝かせてやれよ」


『外傷はないから楽だよ。何も出ないから清潔だしね』


「やっぱり手前と友達になりたくねェわ」


『今更友達も何もないから安心していいよ』

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