【SERVAMP】短編作庫 (ページ7)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:12,574 hit

露木兄弟　２ページ7

「修ちゃんは素直じゃないからなー、とりあえず押して圧して推しまくってみれば？あ。オレにも淹―れて！」

「押す、か。……危なくないか？」

修平は注意力散漫な性格ではないが、不運で何かと毎日酷い目に遭っている。それはもう呪われている勢いで。そんな修平の背中を押しでもすれば、ふらつくならまだしも転倒、もしくは二次被害を被るのではないか。Aの脳内では既に２０回以上も別パターンでことごとく酷い目に遭っては、最終的に当たり前のように去っていく修平の後ろ姿が浮かんでいた。

自分の分のカップを取り、吊戯の分のカップをコーヒーメーカーにセットしてはボタンを押す。吊戯の言葉を復唱しながら、自身の手を開いたり閉じたり、見つめながらAは首を傾げた。その動作に制止をかけたのは車守盾一郎、一児の父でこの中唯一の既婚者である。

「ちょっと待てA！物理的にじゃないからな、わかってるか!?」

「……？ああ、分かってる。」

物理的？と一度脳内に疑問符を浮かべながらも何をしろと言うことなのかは解っている、と言葉を返す。更に制止をかけたのは月満弓景、手先が器用で気配り上手なキレる２０代である。

「ぜってえ、分かってねえな！間違いなく背中を物理で押す気だっただろ!!」

「違うのか」

「はっは！今日も絶好調だね！」

「よかったな、吊戯」

絶妙に会話が噛み合わない、というかズレている。これが露木Aである。仕事は出来、女性職員にもモテるが、能面顔の上、無自覚の天然だ。だが、慣れれば癒やしさえ感じてくるような男であった。Aが運んできたカップを両手で受け取り、吊戯はありがとう、と笑う。

「はっは！じゃあ始めようか、第……何回だっけ？えーと、第４回位！ Aちゃんが修ちゃんとどうやったら仲良くなれるか相談会！」

「吊戯、"Aちゃんが修ちゃんとどうやったら仲良くなれるか相談会"は今回で第５回だ」

「よく覚えてんな……」

弓景の言葉を聞きながら、Aは普段通りの能面のような顔を崩さずにコーヒーを啜った。第１回では直球に思いを伝えよう作戦。第２回は吊戯と弓景がフザケて修平に壁ドンしよう作戦。第３回は案が出ず。第４回は世間話をしてみよう作戦。どれも実行に移したが、全滅した。そもそも避けられている時点で会話の機会を作ることさえ難しい。