【SERVAMP】神隠少女はにこにこ笑う

その四六、 ページ47

「寒いなあ」

「A、今日も散歩に行くの？」

「だめ？」

「だめじゃないよ、僕も行く」



季節はもう冬も近く、天気予報では雪が降るとまで言っている日でもAは通常運転だ。寒いとは言っていても日課の散歩は忘れられないらしい。だめ？とは聞いているが、首からは携帯を下げていて、散歩に行く気満々である。

椿は椅子から立ち上がると、シャムロックが渡したマフラーをAの首元に巻いた。



「外はここより寒いからね、風邪引くよ」

「ありがとう椿くん」



微笑む椿にAはにこにこ笑って返した。他所でやってくれ……と正直げんなりしながら思う桜哉だったが、距離が近くてもAに全く変化が見られないため普通に仲の良い兄妹に見える不思議だ。

そうして椿とAは手を繋いで散歩に出る。その後姿をシャムロックは何処と無く、仲の良い子供たちを微笑ましく見守る親のような目で二人を見送っている。









散歩に出てしばらく、吐く息が白くなるくらいに外は冷えている。Aは立ち止まり、はらはらと予報通りに雪が降って来た空を見上げた。もう冬か、と何気なく思う。

鈴谷Aが神隠しに遭ったのも、こんな雪の降り始めるような日だった。神隠しに遭っていた20年、その年月にAは一人取り残された。だから感謝している、椿に。


Aは武器、というか黒い傘を取り出した。

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