その四三、 ページ44
「椿くん最近機嫌がいいんだね」
今日の散歩は椿と一緒だ。Aは隣を歩く椿を見上げて、にこにこと笑った。暫く何かを悩んでいるようにぼーっとしていることが多かった椿だが、ここ最近は本当に機嫌がいい。それはAだけが分かることではなく、下位の誰もが頷くほどの変化だ。
ヒガンはああ、と何故か納得するようにうんうんと頷いていたが。
「そんなに分かりやすい?」
「うん」
即座に返ってきた肯定の言葉に、椿は笑い出した。いつもの様に発作的に笑い出している。Aは椿の笑いが終わるまで、慣れた様子で立ち止まり椿を見上げつづけた。にこりと変わらぬ何時もの笑みを浮かべたまま、椿を見つめる。
ひとしきり笑い終えた椿は、ねえAとAを見て言った。
「僕の傍にいてくれる?」
「居るよ。私は椿くんの主人だから」
Aは椿の手を放して、一歩踏み出しくるりとその場で振り返った。
「私は死ぬまで椿くんの傍にいるよ」
柔らかく優しく微笑みながら椿の目を真っ直ぐと見つめてそう言った。
椿は自分の胸元を握りしめた。主人だから、かつて自分がAに言った言葉。吸血鬼と吸血鬼の戦争、その中心にAは立つことになる……椿の主人として。
先生の期待に応えるために、
先生の葬儀を行うために、
たとえAが"必要"になったとしても、
「僕がAを守るよ」
「なら大丈夫だね」
Aを"犠牲"にはしない。……椿は微笑み返してそう誓った。
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ななえ - 何度読んでもやっぱり面白い!! この和やかな空気好きです!! (2015年12月26日 23時) (レス) id: 42f6409a50 (このIDを非表示/違反報告)
強欲 - 面白かったです!2部も頑張ってください! (2015年3月28日 18時) (レス) id: ec67facd63 (このIDを非表示/違反報告)
臨歌(プロフ) - 一部完結おめでとうございます!とても面白かったです、二部も楽しみに待ってますね! (2015年3月24日 16時) (レス) id: 71fa6fd779 (このIDを非表示/違反報告)
雪桜(プロフ) - わぁぁぁ!!凄い面白いっ…!貴方の文才分けて下さ((( 続き楽しみにしてますっ!!更新頑張って下さい!! (2015年3月22日 20時) (レス) id: 5321145ad2 (このIDを非表示/違反報告)
サキ(プロフ) - やばい。めっちゃ面白い。続き楽しみに待ってます! (2015年3月20日 23時) (レス) id: b9c63c61f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:山鳥口十 | 作成日時:2015年3月18日 14時