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その三八、 ページ39

「オジサンはヒガン。よろしくね」

「鈴谷Aです。こちらこそ」



遅くなった挨拶を済ませた。にこにこと笑いながら首を傾げるようにして笑うAを見て、ヒガンは少し考えた。この子が椿の主人か……と。にこにこと笑う姿は椿から送られてきた写真どおりでどことなく不思議な雰囲気のある子だと思った。

恐らく自覚はしていないが椿の好きな少女にヒガンはほんの出来心で聞いてみた。



「Aちゃんは椿のことが好きかな?」

「好きですよ」

「!たはは……随分答えが早いね」



予想外。ヒガンは即座に帰ってきた答えに驚きながら困ったように笑う。Aはじぃとヒガンの目を見つめながら、やはりにこやかに笑って首を傾げている。ちりん、と鈴の音が聞こえた。

きっとこの子は深い意味で考えているのではないのだろうとヒガンは思った。例えば友人、家族、そのような関係の人間に伝えるように。べルキアのことが好きかと聞いたとしてもそうだと即答することだろうと。



「いやあ若いっていいねえ〜」

「38歳なんですけどね」

「38!?」

「半分は冗談ですよ?ヒガンさん」



Aはにこりと笑っている。ああ、そういえばとヒガンは椿に聞いていたことを思い出した。Aがごく普通の人間ではなく、20年前に神隠しという現象にあった少女だと言うことを。吸血鬼ならば20年程度で姿が変化しないのは何でもないことだが、普通の人間の容姿が20年間も変わらないことなどない。


人間は脆いものだ……だが、この少女は脆いだけではない。"何か"を起こしそうなそんな妙な予感がヒガンにはあった。


その"何か"がせめて椿の悲しみを癒やすものであるように、ヒガンは願った。

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ななえ - 何度読んでもやっぱり面白い!! この和やかな空気好きです!! (2015年12月26日 23時) (レス) id: 42f6409a50 (このIDを非表示/違反報告)
強欲 - 面白かったです!2部も頑張ってください! (2015年3月28日 18時) (レス) id: ec67facd63 (このIDを非表示/違反報告)
臨歌(プロフ) - 一部完結おめでとうございます!とても面白かったです、二部も楽しみに待ってますね! (2015年3月24日 16時) (レス) id: 71fa6fd779 (このIDを非表示/違反報告)
雪桜(プロフ) - わぁぁぁ!!凄い面白いっ…!貴方の文才分けて下さ((( 続き楽しみにしてますっ!!更新頑張って下さい!! (2015年3月22日 20時) (レス) id: 5321145ad2 (このIDを非表示/違反報告)
サキ(プロフ) - やばい。めっちゃ面白い。続き楽しみに待ってます! (2015年3月20日 23時) (レス) id: b9c63c61f9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:山鳥口十 | 作成日時:2015年3月18日 14時

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