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その二三、 ページ24

「はい、A。」



椿から渡された黒くて薄い板のようなものをまじまじと見つめるA。にこにこ笑ったまま、こてん、と首を傾げた。椿はAの携帯だよ、と言った。Aは以前椿に見せてもらった椿の携帯に似ていると思い返し、頷いた。

わざわざ買ってくれたの?と笑って首を傾げて椿を見るA。椿が携帯を渡したのは、携帯の一つでも持たせておかないと何かあった時に困ると思ったからだ。ちなみに、椿の不安の主な要素はAが自分で「散歩に行っていた」と称して誰にも言わずに放浪するからである。



「でも椿くん、私使い方わからないよ」

「とりあえず電話のやり方だけは覚えてね、僕のアドレスはもう入れてあるから」

「画面に触れればいいの?」

「そう、ここ。このボタンを押して」

「画面を触るだけで動くなんて、不思議だなあ」



使い勝手がわからないAに椿は一から携帯の使い方を教えた。アドレス帳には椿やAの知りあいの下位吸血鬼などの番号を事前に入れてあるので、とりあえずは電話の仕方を。Aは楽しげに頭を左右に揺らしながら、椿の指令通りに携帯の使い方を頭に入れていく。

椿にとって嬉しい誤算だったのがAは元より物覚えは早いほうなので、覚えること自体に時間はそうかからなかったことだ。やってみよう、と椿は自分の携帯からAの携帯に電話をかける。RRRR、と電子音が鳴りAの携帯に着信中、椿という文字が表示された。Aは画面に触れて携帯を耳に当てる。



「もしもし、椿くん。聞こえますかー」

「うん、聞こえてるよ」

「椿くんの声が耳元からも隣からも聞こえて変な感じ」



Aはにこりと首を傾げて笑った。椿は耳元に当てた携帯と隣に座るAを二重に聞いた。声を聞いていると顔が熱くなるような感覚がある、椿は即座に通話を終了した。終了していることに気づかずに電話ってなんだかワクワクするなあ、聞こえる?椿くんと携帯に話しかけているAを見ているとまた心臓の辺りがぎゅと握られるような気がする。



「……もう繋がってないよA」



そう教えればじぃと耳に当てていた携帯の画面を見つめて、本当だねと少し気恥ずかしそうに微笑むから、椿は正直いつか心臓を潰されて死ぬんじゃないかと思った。不死だけど。

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ななえ - 何度読んでもやっぱり面白い!! この和やかな空気好きです!! (2015年12月26日 23時) (レス) id: 42f6409a50 (このIDを非表示/違反報告)
強欲 - 面白かったです!2部も頑張ってください! (2015年3月28日 18時) (レス) id: ec67facd63 (このIDを非表示/違反報告)
臨歌(プロフ) - 一部完結おめでとうございます!とても面白かったです、二部も楽しみに待ってますね! (2015年3月24日 16時) (レス) id: 71fa6fd779 (このIDを非表示/違反報告)
雪桜(プロフ) - わぁぁぁ!!凄い面白いっ…!貴方の文才分けて下さ((( 続き楽しみにしてますっ!!更新頑張って下さい!! (2015年3月22日 20時) (レス) id: 5321145ad2 (このIDを非表示/違反報告)
サキ(プロフ) - やばい。めっちゃ面白い。続き楽しみに待ってます! (2015年3月20日 23時) (レス) id: b9c63c61f9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:山鳥口十 | 作成日時:2015年3月18日 14時

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