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その一〇、 ページ11

「椿くんは狐みたいだね」

「うん?」



引き続き回転ずしでのこと。稲荷寿司しか食べない椿を見ていたらふと頭に狐が浮かんだA。思うままにそう呟くと椿はAを見て首を傾げた。椿が吸血鬼の真祖だと言うことは知っているAだが、椿が黒い狐になれるということは知らなかった。出会った時も昨日も椿自身意図したことではないものの、椿が狐になった姿をAが見たことはなかった。

ああ、Aに見せたことなかったっけ、と椿は最後の稲荷寿司を頬張りながら思い返す。



「狐みたいじゃなくて、僕は狐になれるんだよ。」

「?」

「見せたほうが早いかな、お会計。」



Aがちまちまとパフェを食べ終わったのを見計らい、会計を済ませた椿はAは回転ずしを出た。コン、と椿の下駄の音と共に周りが白く染まり、先ほどまで通りを歩いていた人も走っていた車もAの視界から消えた。

辺りを見回して首を傾げるA、後ろ髪がつれて揺られてちりん、と小さく鳴る鈴。「見ててね。」と椿がいい、地面を蹴って宙へ飛びその場で一回転してみせた。そのまま落ちてきたのはAが見慣れた椿ではなく、黒い狐。腕の中へ飛び込んできた狐を見つめるA。



「真祖は日光の下では動物の姿になるんだ。僕は自在だけどね」

「椿くん?」

「そうだよ。驚いた……って、なんで落とすの!!」



Aはぱっと手を離し、黒い狐こと椿を地面に落とした。さらに、地面に着地した椿から数歩距離をとるA。椿は自分から初めて離れていったAを見て衝撃を受けた。

初対面の際に椿がAの首に手をかけた時も変わらずにこにこと笑っていたし、吸血鬼だと言ってもにこにこ笑うだけでなく吹き出すように笑いながらもごく自然に事実を受け入れていたし、素直という言葉では違和感が残るほど抵抗もなく椿についてきていたAが…………。

そのとき、ざわり、と心の中が揺れるような……、Aを見ていて胸が苦しくなるのとはまた違う苦しさが椿を襲った。

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ななえ - 何度読んでもやっぱり面白い!! この和やかな空気好きです!! (2015年12月26日 23時) (レス) id: 42f6409a50 (このIDを非表示/違反報告)
強欲 - 面白かったです!2部も頑張ってください! (2015年3月28日 18時) (レス) id: ec67facd63 (このIDを非表示/違反報告)
臨歌(プロフ) - 一部完結おめでとうございます!とても面白かったです、二部も楽しみに待ってますね! (2015年3月24日 16時) (レス) id: 71fa6fd779 (このIDを非表示/違反報告)
雪桜(プロフ) - わぁぁぁ!!凄い面白いっ…!貴方の文才分けて下さ((( 続き楽しみにしてますっ!!更新頑張って下さい!! (2015年3月22日 20時) (レス) id: 5321145ad2 (このIDを非表示/違反報告)
サキ(プロフ) - やばい。めっちゃ面白い。続き楽しみに待ってます! (2015年3月20日 23時) (レス) id: b9c63c61f9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:山鳥口十 | 作成日時:2015年3月18日 14時

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