その一五〇、 ページ8
「俺が吊戯の保護者、ね……」
「あたり？」
「いや？ はずれだよ」
嫌な物を含んだ笑みに気づきながらも、Aはただ、そっかあ、と普段通り何一つ変わらぬ様子で言葉を返す。あえて言うなら、なぞなぞの答えが当たらなくて残念程度の雰囲気だった。吊戯は塔間さんに壊されてる、そんな御国の言葉を思い返しながらも、Aが塔間との言葉の応酬を止める事は無い。
「それで副支部長さんはどうして私のお見舞いに？」
「君を今日の試作品テストに同行させたのは俺だからね。今回の事はこちらの配慮が至らず、申し訳なかった」
「仕方ないよ副支部長さん」
想定外の事故だったとはいえ詫びを入れに訪れるのは道理だろうという旨を聞き、成程と理解を示す様にAは頷いた。一応、鈴谷Aは憂鬱の真祖の主人として拘束されている身の上とはいえ、組織の人間でもなく、ただの一般人……色々事情もある、という事だろう。
Aはにこにこと笑みを崩さずに言う。真っ黒な瞳は逸らされる事なく、真っすぐに見透かす様に、塔間を見続けていた。そう言って貰えるとありがたい、と塔間も言葉を返した後で、何か楽しい事でもあるのか、と笑みを絶やさないAの様子にそう聞いた。
「ううん、でも副支部長さんがなんだか楽しそうに見えるから」
「楽しそう？ はは……、面白い事を言うね」
特別、大口開けて笑った覚えもなければ、Aの様に笑顔を作った覚えもない。第三者が此処に居たとしても、塔間が楽しそうだとは到底誰も思わないだろう。確かに、Aの言う通り機嫌が良かったのは本当だが、それを言ってやる必要も無いと塔間は嘲る様な笑みを返す。
コツ、と足音が鳴る。またコツ、と。緩やかにAに近づいて塔間は、何の感情も覗かせない瞳とその笑みを見つめながら、自身の手を持ち上げた。それを座ったまま見上げ続けるだけで、Aはぴくりとも反応を示さない。
「……」
「……」
内心思う所がありながらも、塔間は手を伸ばしその髪を高く結い上げていた鈴付の髪紐を取る。ちりん、という音色の後、ばさりと重力に従い落ちてきた髪に漸くAは疑問符を胸に、にこにこと首を傾げた。
端的に言うと、髪がだいぶ乱れていたから気になった、と言われ、Aは目を瞬かせたのちに、ありがとう、と返答した。包帯に巻かれたその手に髪留めを返して貰う丁度その時、がらりとまた音を立て、扉が開く。出かけていたはずの弓景が立っていた。
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ゆき(プロフ) - とても素敵な作品ですね！更新頑張ってください！ (2017年8月2日 11時) (
レス) id: c2fac8b8e1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみん - とても面白いです！！！続きを待ってます！！ (2017年7月21日 20時) (レス) id: 63ea325151 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみん - とても面白いです！！！続きを待ってます！！ (2017年7月21日 20時) (レス) id: 63ea325151 (このIDを非表示/違反報告)
ナガキ - とても面白かったです！続きを期待します。 (2016年5月6日 21時) (レス) id: c8f811e1da (このIDを非表示/違反報告)
ナガキ - 今日初めて貴方様の作品を拝見させて頂きました。 (2016年5月6日 21時) (レス) id: c8f811e1da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山鳥口十 | 作成日時：2016年3月18日 21時
