その一六六、 ページ24
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モニターに映るのは廊下に設置されている監視カメラの映像の一つ。顔見知りも含めて数人の人影、音声までは聞こえないが、何を話しているかは想像に難くない。塔間は唇で挟む火の付いていない煙草を揺らしながら、手元の書類を確認する。
「……思った通りだ」
先日行われた試作品テストの報告書、記録された数値に思わず笑みが零れそうになった。全て予想通りで何の間違いも無い。……ふと、頭の片隅にあの笑顔が過り、塔間は自身の手に僅かに視線を向けた。頭にこびり付く忌々しい情景、泰士くん、と隣で女が笑ういつかの夕焼けと烏の死骸。
「……。」
何一つ変わる事無く今へ戻って来た彼女に対して浮かぶのは、嫌悪と憐憫が混ざった様な名も無い感情。……酷く、不快な気分だ。火が欲しい、と思いながらも禁煙だ、と煩く言われる事を思い出し、塔間は小さく舌打ちをする。
些細な私事に気を留めている場合ではない。モニターに視線を戻せば、首を吊られて宙に揺れる吊戯の姿が映し出されていた。その姿に思わず、乾いた笑い声が零れる。
「はは、吊戯……。相変わらず御国と遊んでるのか。俺はまだ死んでいいなんて言ってないだろ？」
呟きを遮るようにコンコンと扉がノックされる。耳は音を拾っていたが言葉を返すのが手間だと思い、音を無視して映像から読み取れる情報を分析する。御国が大人しくＣ３に来たのも何か裏があるかもしれない、そう思考を巡らせる最中、返答を待たずに扉は開かれ、誰かが何かを言っている。
「……ここは禁煙ですよ、副支部長」
「吸っていないよ」
「会長からお電話です。聞こえているなら一度で返事をしてください」
「聞こえてないとは言ってないだろ？ 電話や来客は待たせるくらいでちょうどいい」
減らず口をたたいてないで早くしてくれ、と見るからに顔に書いてある様な表情には失笑を禁じ得ない。先程まで目を通していた資料を片手にモニターの前から離れる塔間は後を追いながら、次を考える。
幾つか把握しておかなくてはならない事がある。御国の目的もそうだが、優先すべきは吊戯の事だ。狼谷吊戯は鈴谷Aに執着し過ぎている。吊戯が肝心な時に使えなくなる方が一番問題だ。
「"憂鬱"の主人、か……皮肉なもんだな」
何か言いました？ と訝し気に振り返る職員に塔間は何も、と意地の悪い笑みを返した。
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ゆき(プロフ) - とても素敵な作品ですね！更新頑張ってください！ (2017年8月2日 11時) (
レス) id: c2fac8b8e1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみん - とても面白いです！！！続きを待ってます！！ (2017年7月21日 20時) (レス) id: 63ea325151 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみん - とても面白いです！！！続きを待ってます！！ (2017年7月21日 20時) (レス) id: 63ea325151 (このIDを非表示/違反報告)
ナガキ - とても面白かったです！続きを期待します。 (2016年5月6日 21時) (レス) id: c8f811e1da (このIDを非表示/違反報告)
ナガキ - 今日初めて貴方様の作品を拝見させて頂きました。 (2016年5月6日 21時) (レス) id: c8f811e1da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山鳥口十 | 作成日時：2016年3月18日 21時
