その一六四 ページ22
「"枕元で絵本を読んで欲しい。いい子、いい子と頭を撫でて欲しい"……」
露木の困惑に近い焦燥交じりの声も吊戯には既に聞こえない。決して手に入る事のない居場所、其処に居る自分とあの子を想像する。一緒に傍に居て、何気ない事で笑いあって……。
神に祈りを捧げる信奉者の様に手を組み合わせ、呪文を唱える吊戯に迫る御国とジェジェの追撃。それを軽々と飛び避けてまずは吸血鬼の方を床に叩きつけ、無力化する。無邪気な笑顔を吊戯が浮かべれば、対照的に御国は眉を吊り上げ怒りをあらわにするが、すれ違いざまに足元を払われ膝から床へと崩れ落ちる。
「"そして優しく抱きしめて、愛しているよと言って。私は、あなたの宝物"」
「真昼！ 下がっ……」
訪れるはずのない世界を想像しながら、吊戯は魔法の発動を感じ取る。呆然と立ち尽くす真昼との距離は吊戯が大きく一歩踏み出せば簡単に詰められる。真昼には吊戯が一瞬幼い子供に姿を変えた様に見えた。無邪気な笑顔を向けて、両手を伸ばしてくる子供と真昼の合間にクロが飛び込み、庇う。
バチン、と音を立てながら、吊戯の手の平がクロの喉元へ突き付けられる。そうして、吊戯の魔法"一人にしないで(ネバーランド)"が完成した。跳躍して距離を取った吊戯は先手必勝！ といつもの様に笑う。
「な……？ 何ですか、今の魔法……!?」
「うん。これでもうキミはオレの管理下だ」
クロの首には吊戯の着ける物に似た黒の首輪。吊戯の首輪と見えない紐で繋がっている様に一定距離以上離れる事が出来なくなり、吊戯の意思で強制的に拘束する事も、首を絞める事も出来る。吊戯の説明に真昼は目を見開き、クロを見た。
「はっは！ あんまりやりたくないから言うこと聞いてほしいな。ちなみにオレ自身が解除するか、オレが死ぬまで外せないから」
「めんどくせー……オレは引きこもり推奨派だぞ……」
「おいクロ……！ 諦め早すぎだろ！」
「だいじょぶだよ！ オレもインドアっていうかアンダードアって感じだから！」
クロが脱力する様に黒猫へと姿を変えれば、吊戯は軽快に笑いながらそう答えた。小言を言いたげな露木に気づくが、少しばかり手順が強引になっただけで、制限はいずれかけるつもりだったんだし、塔間さんも止めなかったんだから問題ないだろう、と自己完結して自身の行動を正当化しておく。
吊戯の笑い声を聞きながら、御国は床に落ちた人形に手を伸ばす。そして、自らの真祖の名を呼んだ。
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ゆき(プロフ) - とても素敵な作品ですね！更新頑張ってください！ (2017年8月2日 11時) (
レス) id: c2fac8b8e1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみん - とても面白いです！！！続きを待ってます！！ (2017年7月21日 20時) (レス) id: 63ea325151 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみん - とても面白いです！！！続きを待ってます！！ (2017年7月21日 20時) (レス) id: 63ea325151 (このIDを非表示/違反報告)
ナガキ - とても面白かったです！続きを期待します。 (2016年5月6日 21時) (レス) id: c8f811e1da (このIDを非表示/違反報告)
ナガキ - 今日初めて貴方様の作品を拝見させて頂きました。 (2016年5月6日 21時) (レス) id: c8f811e1da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山鳥口十 | 作成日時：2016年3月18日 21時
