その一六二、 ページ20
「闇夜を懸ける中二病トリオの略で、陰でそう呼ばれてんの」
「……、」
次々と与えられる断片的な情報を整理する間もなく、その時々の感情に翻弄される子供相手に思考を誘導するのは御国にとってそう難しい事ではない。いとも容易く話題を逸らせて、今度は各地で騒動を起こす下位吸血鬼の事、異常気象の事、次々と世間話の様に語る。
「早めに対処しないと、吸血鬼はより行動しやすいし騒動も増える。これが椿の目的なのか、それとも……ま、そういうわけでＣ３側もそろそろ本格的に動くでしょ」
こういう所が、苦手なんだと露木は顔を顰めた。沈黙している真昼は御国の思惑通りに与えられた情報について考え込んでいる。吸血鬼を黙らせる大規模粛清、後の作戦まで、大よそ全て御国の想像する通りだ。
「下位吸血鬼を一体ずつ壊して椿を誘き出す。元々人質の計画はあったんだ。椿に主人が居たって知れた時からね」
御国は笑みを浮かべる。主人の方は人間だ、下位を相手にするより容易い。人質にする、懐柔して内通者にする、そんな作戦の案自体は幾つも上がっていた。有効的で成功する確率が高いと判断されなかったから、行われなかっただけで……。
まあ彼女は善悪を判断して動くというより、今現在自分が立っている場所に在り続けようとするだけの人間みたいだから懐柔するのは無理だろうけど、と内心では思いながら真昼へと言葉を続ける。
「君が下位を壊さずに捕まえたからこそできる事だよ！」
「っ、そんなつもりで殺さなかったわけじゃない！ そんなやり方……どっちが"悪"か、わからないじゃないですか!!」
「――君はまだ"正義"なんてもの、信じてるんですか？」
その訴えは御国にとっても露木にとっても予測の範疇を出ない。頭が痛いと露木は息を吐きながら目元を押さえる。こうなるだろうとは思っていたんだ、そう思いながら諦める様に真昼から目を逸らした。
正義なんて耳触りの良い言葉は誰にとっての、を考えるだけで本質ががらりと変わる。だから変えてはならない。Ｃ３にとっての正義を遂行する事が人間にとっての正義なのだと。元を断たねば終わらない、何も、誰も、誰かが殺されて繰り返すだけだ。それを目の前の子供に説いた所で、真昼はそれでも、を続けるだろう。
御国に引っ掻き回された空気がまた重くなる時、通路の角からひょっこりと顔を覗かせた話題の人は露木を見つけるなり駆け足で寄って来た。
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ゆき(プロフ) - とても素敵な作品ですね！更新頑張ってください！ (2017年8月2日 11時) (
レス) id: c2fac8b8e1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみん - とても面白いです！！！続きを待ってます！！ (2017年7月21日 20時) (レス) id: 63ea325151 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみん - とても面白いです！！！続きを待ってます！！ (2017年7月21日 20時) (レス) id: 63ea325151 (このIDを非表示/違反報告)
ナガキ - とても面白かったです！続きを期待します。 (2016年5月6日 21時) (レス) id: c8f811e1da (このIDを非表示/違反報告)
ナガキ - 今日初めて貴方様の作品を拝見させて頂きました。 (2016年5月6日 21時) (レス) id: c8f811e1da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山鳥口十 | 作成日時：2016年3月18日 21時
