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月が哀しい程綺麗な日だった。
住んでいる屋敷をこっそり抜け出した月詠は、
近くにある河川敷を散歩していた。
特に目的があって来たわけではなかったが、
初めて一人で散歩したことが何よりの喜びだった。
月詠は“独り”だった。
両親も兄弟もいるし、召使いもいる。
しかし、そこには退屈な日々しかなかった。
たまたまお金持ちの家に生まれたというだけで、
一人にさせてくれない。いつも護衛かいる。
それに、誰からも愛情らしい愛情を
与えられることがなかったのだった。
「月詠は将来お父さんの会社を継ぐんだからな」
「絵を描いた?そんなことより勉強しなさい」
そんなことばかり言われて育った。
「………はぁ」
今頃、屋敷では自分が居ない事がばれ、
捜索が始まっているだろう。
「…せめてもっと、この景色を楽しませてほしいわ。」
「お嬢さん。」
不意に、誰かの声が聞こえた。
振り向くと、20代程の男が立っていた。
月詠が動揺していると、男は苦笑いをする。
「そんな怖がらないで……。
…ねえ、君は独り、なんでしょう?」
ぴたっ、と時が止まったように月詠の体が静止する。
そんな月詠の様子を気に止めず、男は続けた。
「…君、“使者”にならないかい?」
ー
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大和@givehappi(プロフ) - ないよ。(( (2019年11月5日 5時) (レス) id: 81e0f61c78 (このIDを非表示/違反報告)
むあ@感染系チキン@ギブハピ(プロフ) - 文才あるよね…うん、わかってた。← (2019年11月4日 22時) (レス) id: fbd37a4285 (このIDを非表示/違反報告)
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