この命、果てるまで【鬼滅の刃】

肆拾参ノ型 ページ44

炭治郎side



「はああぁぁぁぁんんん？？
お前、Aさん見えてねぇの？え？正気？
こんな綺麗な人が苦しんでるんだよ？何のための目だよ。目腐ってんじゃないの？

って、Aさあぁぁあん!!」


善逸が走り出すのと同時に、ドサッと人の倒れる音がした


振り向くと、善逸の腕に倒れかかったAさんの姿があった



「Aさん！痛っ…！」


右足を前に踏み出した途端、
今まで感じたことのないほどの激痛に襲われた


『ご、めんね、重いでしょう？善逸くん。
そして、炭治郎くん…私は、大、丈夫よ。
それより、も、自分の心配！
私より、酷い、怪我、なんだから』

そうやって微笑むAさんの顔は、
あまりにも青くて、1番重症そうに見えた

もう1度声をかけようと、鼻から息を吸った瞬間、
突然、強い風が吹いた



!!


この匂い、そうだ！何で気づかなかったんだろう!!


「Aさん！
俺、Aさんにさっき酷いことを…」

言いかけた俺の言葉は、途中で煉獄さんの手で塞がれた


「竈門少年、今そのことを口に出すのはA少女にとって、あまりにも酷だ。
後で、俺がこの任務の責任を持って確認を取る(・・・・・)から心配は無用だ」


よいしょ、と刀を杖代わりに立ち上がろうとする煉獄さんを俺は驚愕した



「煉獄さん!?安静にしてないとダメですって！」

「少し、A少女の隣に行くのを手伝ってはくれないだろうか？」

「…わかりました。
伊之助、煉獄さんを手伝ってもらえるか？
俺はもう立てなくて」


伊之助は無言で煉獄さんの左側を支え、共にAさんの方へ歩いて行き、
煉獄さんをAさんの横に座らせた

Aさんは既に、顔から笑みは消えていて、
苦しそうに仰向けになって呼吸をしていた


「杏寿郎、何で此方、まで、来、たの。
早く、隠、のところ、へ」


「A少女の方が重症なんだ。
そこまで俺も弱くはない。

A少女、もう戦いは終わった。朝が来た。
俺たちの勝ちだ。
だから、もう安心して眠りなさい。
隣には俺がいるから」

そう言って、煉獄さんはAさんの目元に手を翳した


10秒後、朝日に照らされたAさんは、決して気持ちよさそうではなかったけれど、
眠っているようだった



「A少女は、昔からこうすると直ぐに眠るんだ。
こんなに昔から一緒にいたのにな、どうして気付いてやれなかったんだろうな」


そう呟いた煉獄さんの横顔は、どこか懐かしそうで、同時に悲しい匂いもした

肆拾肆ノ型→←肆拾弐ノ型

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す