Hit the floor 1 ページ30
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暗いですごめんなさい…
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その少年が"雪月花"にやってきたのは、大野がそこで働き始めてから２年ほど経った頃のことだった。
「大野、今日からこいつの面倒を見てやってくれ」
佐伯に手を引かれて現れたその少年は、髪をぼさぼさと伸ばし放題に伸ばしていて、ひどく痩せこけた体に合わない、大人サイズのＴシャツを着ていた。
「…この子は？」
佐伯が自ら子どもを連れてここに来ることは滅多にない。何か特別な事情があるのではないか。短い質問に込められた大野の疑問を違わずに理解して、佐伯は眼鏡の奥の瞳で微笑んだ。
「古くからの知り合いの子なんだ。ギャンブルと酒が好きな男でね。金に困っていたようだったから、引き取った」
「そうですか」
「今はこんななりだから分からないだろうけど、かなりの美人だよ。大切に扱ってくれ」
「分かりました」
「じゃあ、翔。このお兄さんの言うことを聞いて、いい子にしてるんだよ」
ぽんぽんと頭を撫でて立ち去ろうとした佐伯を、翔はグレーのスーツの裾を掴んで引き止めた。
「…さ、えき、さ…」
か細く高い声は震えて、置き去りにされることを恐れている。けれど佐伯は縋る手を外させ、翔と視線を合わせてにっこりと笑った。
「僕もときどき、様子を見に来るから。大丈夫、何も心配はいらないんだよ」
ばいばいと手を振って去っていく佐伯を、翔は今度は引き止めなかった。
「じゃあ、翔…くん。まずお風呂に入ろうか。それでその後髪を切ろう。着替えはこっちで用意するから」
背中に手を添えて歩くよう促したが、翔は動こうとしない。代わりに、大野の顔を見上げてきた。
長い前髪から覗く瞳は、大きくて丸かった。わずかに涙を湛えて、黒く、つやつやと光っている。その瞳に言いようのない艶があるのを感じて、大野は唾を飲み込んだ。
「さえきさん…次はいつ、会えるの…？」
「…え？ うーん、そうだなあ…佐伯さんも忙しい人だから、しばらくは会えないんじゃないかな」
「そう…」
「大丈夫だって。翔くんがいい子にしてたら、絶対会いに来てくれるよ」
出まかせの嘘だった。けれど、その嘘は小さい子どもを喜ばせたようだ。前髪の奥でにっこりと笑うと、翔は素直に歩き出した。
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唯 - 優子さん» ありがとうございます。いつもにまして難産なお話になりそうです…気長に続きをお待ちください。 (2016年3月9日 3時) (
レス) id: 0f485288ef (このIDを非表示/違反報告)
優子 - 読みました。これからどうなるか気になります。 (2016年3月2日 18時) (レス) id: 059e629431 (このIDを非表示/違反報告)
唯 - 優子さん» ありがとうございます。プロポーズは大野さんが仕掛けるだろうと思われます。 (2016年2月28日 20時) (レス) id: 0f485288ef (このIDを非表示/違反報告)
優子 - 読みました。智君の先生姿格好良いですね♪翔君可愛いですね♪プロポーズは智君から格好良く言うて欲しいですね♪ (2016年1月25日 23時) (レス) id: 059e629431 (このIDを非表示/違反報告)
唯 - 優子さん» ありがとうございます。ギャップ王子な大野さんでした。翔くんは可愛い上に押しに弱いので、大野さんお気の毒です。 (2016年1月25日 20時) (レス) id: 0f485288ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：唯 | 作成日時：2015年7月19日 23時
