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２か月ほど経って、新入生たちはすっかりこの高校に馴染んだようだ。初日の大人しさが幻だったかのように、馬鹿をしては無邪気に笑い転げている。
男に対して恋心を抱き始めた生徒も少なからずいるようだった。自然のなりゆきだ、来る日も来る日も目に入るのは男ばかりなのだから。生まれた想いに戸惑う様子は、自分も通ってきた道なだけに、櫻井にとっては微笑ましいものだった。
しかし、そうやって和んでいられるケースは少ない。彼らはとにかく飢えているのである。そういう年頃なのだから仕方ない。けれど、周りにいるのが男ばかりというのがまずい。今の時代、少し調べれば男同士でもできるのだということはすぐ分かるだろう。そして、女性相手なら許されないようなことも、男相手ならいいのではないかと考えてしまう。その勘違いから被害者が生まれないように、目を光らせておかなくてはならない。
そして、櫻井が特に心配している生徒が、大野智だった。初日に櫻井が目をとめた生徒だ。とにかく可愛らしい、男子に好かれそうな男子である。ただ可愛いというだけなら心配する必要はない。問題なのは、自分がそういう対象として見られうるタイプなのだということを自覚していなさそうなところだ。長めの襟足は大野をより中性的に見せているし、ゆるく制服を着崩しているせいで、細い首筋が露になってしまっている。きわめつけは、あの優しげな笑顔だ。ふわふわとしたあの表情には警戒心が欠片も感じられない。あいつならいけそうだ、と思われてしまっても不思議ではない。
櫻井は、大野に言っていた。男子校はあまり安全な場所ではないのだから、隙を見せてはいけないのだと、それとなく何度も。しかし大野は楽しそうに笑い、「大丈夫だよ、おれは」と言うだけで、真面目に取り合ってはくれなかった。
大丈夫じゃなさそうだから言ってるのに、と櫻井は歯がゆく思った。実際、複数の生徒が大野にじっとりとした視線を向けているのだ。それに気づいてもいないくせに、大丈夫なことがあるものか。
大野は、まるで赤ずきんだ。狼たちに狙われていることも知らず、のんきに花を摘んでいる。物語の中では彼女に危険を知らせてやれる者はいなかったが、現実世界では自分が助けてやることができる。大野は自分が守るのだ。櫻井は決意を新たにした。
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そして、大野が赤ずきんを装った狼だったということが分かるそのときまで、その決意は揺るがなかったのである。
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唯 - 優子さん» ありがとうございます。いつもにまして難産なお話になりそうです…気長に続きをお待ちください。 (2016年3月9日 3時) (
レス) id: 0f485288ef (このIDを非表示/違反報告)
優子 - 読みました。これからどうなるか気になります。 (2016年3月2日 18時) (レス) id: 059e629431 (このIDを非表示/違反報告)
唯 - 優子さん» ありがとうございます。プロポーズは大野さんが仕掛けるだろうと思われます。 (2016年2月28日 20時) (レス) id: 0f485288ef (このIDを非表示/違反報告)
優子 - 読みました。智君の先生姿格好良いですね♪翔君可愛いですね♪プロポーズは智君から格好良く言うて欲しいですね♪ (2016年1月25日 23時) (レス) id: 059e629431 (このIDを非表示/違反報告)
唯 - 優子さん» ありがとうございます。ギャップ王子な大野さんでした。翔くんは可愛い上に押しに弱いので、大野さんお気の毒です。 (2016年1月25日 20時) (レス) id: 0f485288ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：唯 | 作成日時：2015年7月19日 23時
