無邪気な瞳へ[レイ] ページ5
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(※【約束のネバーランド】天の川を歩くの世界線ですが、本編未読でも大丈夫です。)
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ママの声が遠くなり、やがて聞こえなくなるとどちらともなく足を止めた。
2人揃って肩で息をしていると、それが面白かったのか吹き出すように笑うリオ。
その拍子に乱れた息がつまって彼女は咳き込んだ。
俺は慌てて駆け寄ってから背中をさする。
息は切れていれど、こっちはいつ発作が起きてしまうか気が気でないのだ。
やがて、呼吸が整ったリオは「ありがとう」と言ってはにかんだ。
……ああ、そういうところ。
なんでもない彼女の言動にいちいち動揺してしまう自分がバカらしくて、俺はやり場のない気持ちとともにリオの頭を軽く小突いた。
「はあ……それにしてもなんで俺まで走るはめに……」
「えへへ、だってレイが近くにいたから」
「えへへじゃねーよバカ」
「いたっ」
──リオがママに内緒で外に出ようとした。
星がきれいだったから。どうせ理由はいつもと同じだろう。
1番最初に彼女姿を見つけた俺は、すぐに察して彼女をママのもとまで連れていった。
そこまではよかったんだ。
「はあ……帰ったら俺も叱られるな」
「大丈夫だって。2人なら怖くないよ」
「お前のせいだからな」
──ママがリオの手を掴もうとした途端、俺はリオに手を握られそのまま一緒に駆け出した。
俺たちを呼ぶママの声を背中で聞きながらリオは全力で走って、そして笑っていた。
やがて口を閉じると、静寂が訪れた。
リオはその場で寝転び、大きく伸びをする。
もう片方の手で持っていた本を開くとおもむろに星を探し始めた。
「星、きれいだな」
「だから言ったでしょ?今日は一段ときれいに見えるんだって」
「そうだっけか?……あーあ、帰ったら怒られるな」
「きっと大丈夫だって!2人なら怖くないよ」
夜空を夢中で見上げる彼女は、星には目を離さず簡単にそう告げた。
……なんて言えば、リオはこっちを向いてくれるだろうか。
星座を探し、夢中で空を眺めるその無邪気な瞳へと何か叫んでやりたい。
夢心地なその顔がムカつくから、驚かせてやりたい。
例えば、好きって言ったら。
お前はなんて言ってくれる?
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〈当たり前以上を望んだ話〉
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作者名:月ノ瀬 | 作成日時:2019年6月8日 0時