義姉と義弟 ページ38
エレンside
俺はAのことを聞いた。
俺は本当の兄貴ではない。
しかもAの方が年上だ。
「私が家から逃げ出したのは私の中の何かがそこは本当の家じゃねぇって告げていたからかもしれないな」
Aが呟いた。
その目には涙が浮かんでいた。
Aの本当の父母はどこにいるのか分からない。
妹は地下に閉じ込められている。
無理もないかもしれない。
「A、俺はお前の本当の兄弟じゃない。だが義理の弟だ。血の繋がりはなくても俺たちは家族だ。好きに頼れ」
俺はそう言った。
Aはこちらを振り向いた。
涙が一粒こぼれ落ちる。
「ありがとな」
Aは本当の家族の温もりを知らずに育った。
そして1人で生きてきた。
そのぶん強くなる部分もあるだろう。
その代償に弱い部分もある。
それを補えるのは俺かもしれない。
ミカサかもしれないし、ハンジさんかもしれない。
でもおそらくそれはリヴァイ兵長だ。
「エレン、一つだけ頼みがあるんだがいいか？」
Aは俺を見上げて言った。
「あぁ。なんだ？」
Aはニヤリと笑った。
嫌な予感がする。
「Aお姉ちゃんって呼べ。前の仕返しだ」
Aにしてはマシな仕返しだ。
この歳になってお姉ちゃんは恥ずかしいな…
「…Aお姉ちゃん…」
Aはさらにニヤッと笑った。
それは悲しみを隠すための強引な笑いに見えてならなかった。
その泣き笑いを見ていると俺まで泣けてくる。
「さぁ、行くぞ。訓練の時間だ」
Aは涙を拭って歩き出した。
そんなに強がる必要はないのにな…
俺はリヴァイ兵長にさっきの出来事を伝えておいた。
兵長は頷いてAを引っ張っていった。
「は？おい！訓練が…」
Aは訳が分からずされるがままになっていた。
ちょっと気の毒に見えてくる。
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作者名：カシオペア | 作成日時：2017年7月9日 8時
