自己中だね、ごめん〈arkt〉 (ページ1)

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ktside

「圭人！聞いてよ！」

久し振りの山ちゃんとの喫茶店巡り。

席に座った途端にこにこ笑顔でそう言ってきた山ちゃん。
…顔の緩みがひどいなぁ

「どうせ、伊野ちゃんのことでしょ？」

それ以外、考えられない。
山ちゃんをこんなでれでれの顔にさせるのは伊野ちゃんだけ

案の定山ちゃんはえへっと笑ってすぐに頷いた。

「今日さ、伊野ちゃんに圭人と遊ぶっていったら、すごく不満気な顔してさ？そのあとに、『帰ってきたら俺に構ってよ』って言って伊野ちゃんからキスされた！」

「へぇ…それ、可愛いね。伊野ちゃん意外と嫉妬深いの？」

俺の問いに山ちゃんは尚更気を良くしたのか、
何度もこくこくと頷く。

「俺がドラマで女優と絡んでるの見ただけで、やだっていって俺に抱きつくの！ちょーかわいくない？」

鼻の下伸びきってるなぁ…

俺の相槌がなくとも勝手に山ちゃんは話を続ける。

…こんな幸せそうな山ちゃん、初めて見るから嬉しいんだけどね

山ちゃんから伊野ちゃんと付き合った、という連絡をもらった時本当に嬉しくて電話越しに泣いてしまった。

そしたら、山ちゃんは『何でお前がなくの！』って笑ってたけどすこしだけ涙声で。
『ありがと、圭人』と言った山ちゃんの声はすごく穏やかだった。

山ちゃんも伊野ちゃんも、
いろいろ遠回りしたけどやっと幸せになった。

……本当に良かった

「山ちゃんが幸せになってくれて、俺嬉しいな」

惚気をずっと話していた山ちゃんが俺の言葉をきくときょとんとしたが、すぐににっと笑って、

「圭人も幸せだろ？」

と言ってきた。

……悪気がないことは分かってる。

でも、この話題は、嫌いだ

「最近大ちゃんとはどうなの？うまくいってる？」

喋り過ぎで喉が渇いたのか水を一口飲むと俺に聞いてきた。

…困ったな、よくない流れだ

「…最近大ちゃんロケとか多いから、会う回数はそんなみんなとかわらないよ」

差し障りの無い程度の答え。
それに山ちゃんはえーっと声を上げ、口を尖らせる。

「大ちゃん、ああみえて結構モテるから気をつけろよ？」

彼なりのアドバイス。
彼なりの心配。

でも今の俺にはそれが胸を苦しめている。

「……うん、わかってるよ。ありがと」

俺が笑みを作ると山ちゃんは俺の頭をぽんっと撫でて微笑んだ。

どきっと高鳴る胸。

大ちゃんと付き合った理由が最低なのに、

まだ山ちゃんのことが好きな俺は

救いようのない馬鹿だ。