蒼い星 ページ8
O「えっ!代役ですか?」
「明日の公演からは君は舞台に出なくていいからレッスン場へ行きなさい。」
O「…はい。」
大野は日本でもトップクラスの劇団に所属するプロの俳優だ。
主にミュージカルを上演するこの劇団は徹底した実力主義で、「一音落とした者は去れ」という言葉があって
例え大野のような10年選手でも少し舞台でミスが重なればこうして役を降板させられるのは日常茶飯事。
逆に実力のある若手が大抜擢をされる事もあり、大野は今までそうして役を掴んできた。
O「ハァ…そろそろかなぁ…」
レッスン場の裏手の喫煙所で煙草をふかしながら、誰ともなく呟く。
歌にダンスに身体を酷使する職業、いくらプロと言えども年齢の限界が近づいている。
テレビや映画へ活動を移すのか、裏方として劇団に残るのか。はたまた全く違う道を選ぶか。
大野はその分かれ道の分岐点に自分が立っているのを感じた。
「おつかれさまでーす!」
劇団員が一人、また一人と去るのを大野はぼんやり煙草をふかすふりをして待つ。
真夜中のレッスン場が大野のフィールド。
ライバル達の前では決して本気の練習をしないのが彼の流儀だ。
ライトを落としたレッスン場。鏡に映る白いジャージのシルエット。降板させられた役のパートを何度も繰り返してみるが、自分でも満足がいかない。
とうとう大野は床に身を投げ出した。
冷たい床の感触と、頬にまた違う感触。
O「俺、泣いてんのか…」
タオルで乱暴に顔を拭うと帰り支度を始めた。
…
劇場からほど近いアパートへ重い身体を引きずって歩く。
O「…太ったんかなぁ」
商店街のウインドーに自分を映してみる。若い頃よりむしろ痩せている。また頭をひねった時にウインドーに流れ星が見えた。
O「ぁ…いつまでも若くいられますように!」
思わず子供のように唱えてしまった自分が恥ずかしくなって、急いでアパートへ帰る。
ベッドに横たわり、ふと
O「年齢は若くなれないけど、基礎から鍛え直したら経験値の分は俺だってリード出来るんじゃないかな」
そんな考えが彼の頭をよぎった。
ムクッと身体を起こして、頭にタオルを巻く。
O「オシ。次の次は俺が。」
アパートの廊下に出ると階段の手すりを掴んで大野は基本のバーレッスンを丁寧に始めた。
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*はな*(プロフ) - 今夜も梅雨の夜空……星も月も見えません…。こんな夜、星職人さん達は何をしているんでしょうね…。「は−し−ら−な−い−。」とか言われてるのかな。(^^)かわいい見習い職人さんにまた会いたくて、お話を読みに参りました。 (2014年6月27日 23時) (携帯から) (レス) id: 2a82fe1f9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆみ(プロフ) - *はな*さん» そうですね。なんだかんだで見守るニノや丸太の上で固まる翔ちゃん…楽しく想像していただけたらいいな。 (2014年6月25日 20時) (レス) id: 9679011bf3 (このIDを非表示/違反報告)
*はな*(プロフ) - 嵐さんて、ひとりひとりの特徴がはっきりしているので、お話の中の登場人物の表情も思い浮かべやすいですよね。…今日は、相葉さん率高めでお話がより賑やかに♪楽しく読ませていただきました。 (2014年6月25日 20時) (携帯から) (レス) id: 2a82fe1f9f (このIDを非表示/違反報告)
ryou(プロフ) - ゆみさん» 確かにあれはキュートですね♪相葉ちゃんらしさ全開で見るとほっこりしますよね。まるでゆみさんの作品のようですねー(≧▽≦) (2014年6月25日 20時) (レス) id: fca6f438ad (このIDを非表示/違反報告)
ゆみ(プロフ) - ryouさん» 相葉ちゃんのミスドCMがキュートすぎて書いちゃいました~ (2014年6月25日 20時) (レス) id: afc9116f09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆみ
作成日時:2014年2月1日 17時