検索窓
今日:11 hit、昨日:0 hit、合計:100,956 hit

黄色の星 ページ5

N「あ〜ハヤシライス終わっちゃったんす」

無愛想にカレーをかき混ぜながら、二宮は最近ひんぱんに現れる客をやり過ごした。

亡くなった親から引き継いだカレー専門店は父親の作ったレシピと母親が築いた常連客で

可もなく不可もなく、日々の暮らしには不自由せずにやっていけている。

二階の住居と店の往復。

休日はゲーム三昧。

常連客の中には「あとはお嫁さんだけねえ」などと言う者もあるが、携帯電話が普及してから彼女がいたことのない二宮にとってお嫁さんはさほど重要とは思えない。

そう。特に不満はない人生。

強いてあげるなら、思いつきで一度だけ出したハヤシライスをしつこく要求してくるあの客がうざったいとかそんな位の人生。

N「このまんまでいいのかね〜」

閉店後、二階の住居の真っ暗な部屋の中、窓を開けて外灯だけでビールを飲む。

何かが足りない。
何か今までの自分を変えなければ。

かつてからそんな風に思っていた彼は、服を着たまま風呂に入ってみたり、いろいろもがいてみた。

N「…でも何かハマらないんだよな」

二宮は二本目のビールをあおった。

ホップの香りと白いため息が夜空へ舞い上がる





N「あ、今日もハヤシライス終わっちゃったんすよね〜」

またいつも通り閉店して、二宮は階段を上がり缶ビール片手に窓を開く。

N「今日は星がキレイ…」

プルタブも引かずに缶ビールを窓辺に置いたまま、二宮は屋根裏へ駆け上がり望遠鏡を取り出した。

N「久しぶりだなぁ…」

二宮が中学の入学祝いでせがんで買ってもらったそれ。まだ父親が今の人気レシピを開発する前で夜遅くまで厨房にいた背中をなぜだか思い出す。


ふと望遠鏡から目を離すと

N「リンゴ、もうちょっと増やしてみよっかな…」

いつかあの客にカレーライスを注文させてみたい。二宮はその思いつきに久しぶりに心を踊らせて、軽い足取りで店舗へ戻っていった。


.

黄色の星→←雨



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (363 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
293人がお気に入り
設定タグ:山風百貨店   
作品ジャンル:タレント
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

*はな*(プロフ) - 今夜も梅雨の夜空……星も月も見えません…。こんな夜、星職人さん達は何をしているんでしょうね…。「は−し−ら−な−い−。」とか言われてるのかな。(^^)かわいい見習い職人さんにまた会いたくて、お話を読みに参りました。 (2014年6月27日 23時) (携帯から) (レス) id: 2a82fe1f9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆみ(プロフ) - *はな*さん» そうですね。なんだかんだで見守るニノや丸太の上で固まる翔ちゃん…楽しく想像していただけたらいいな。 (2014年6月25日 20時) (レス) id: 9679011bf3 (このIDを非表示/違反報告)
*はな*(プロフ) - 嵐さんて、ひとりひとりの特徴がはっきりしているので、お話の中の登場人物の表情も思い浮かべやすいですよね。…今日は、相葉さん率高めでお話がより賑やかに♪楽しく読ませていただきました。 (2014年6月25日 20時) (携帯から) (レス) id: 2a82fe1f9f (このIDを非表示/違反報告)
ryou(プロフ) - ゆみさん» 確かにあれはキュートですね♪相葉ちゃんらしさ全開で見るとほっこりしますよね。まるでゆみさんの作品のようですねー(≧▽≦) (2014年6月25日 20時) (レス) id: fca6f438ad (このIDを非表示/違反報告)
ゆみ(プロフ) - ryouさん» 相葉ちゃんのミスドCMがキュートすぎて書いちゃいました~ (2014年6月25日 20時) (レス) id: afc9116f09 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆみ
作成日時:2014年2月1日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。