夜空を紡ぐふたり

雨蛙 ページ23

S「さぁとしクン！！お留守かな？」

翔がグイッとドアに手をかけるとブルーの扉が開いた。

M「寝てるのかな？」

S「お昼なのに？お風邪かな？」



翔がズカズカと中へ入ると作業場のソファがもそりと動く。

S「わっ！」

M「智、どした？風邪か？」

潤が心配そうに額に手をあてるのを、翔も後ろから顔を出してジッと見つめる。


O「んあ…こんな時間？あぁ、風邪じゃないよ。朝顔。」

S「朝顔？」

O「ん。朝顔始まったからさ〜最近夜明け前から仕事なのよ。」

智は植物職人。野菜や花に色を塗り仕上げていくのが仕事。旬や時間は待ってくれないから時にハードスケジュールになる。


M「わりいな。出直そうか」

O「いいよ。ねぇなんかイイ匂い」

S「潤がねぇパンケーキ焼いたの」

M「雅紀ん所行くけど来る？」

O「行く！ちょっと準備すんね。パンケーキかぁ…それなら」


寝ぐせのついたまま智が真剣な顔で唇を尖らせて潤と野菜を選びはじめるから翔はクスリと笑ってしまう。

O「今ならインゲンは？」

M「ん。アンチョビとサラダかな。ジャガイモある？コンビーフ缶とグラタンに…」

S「グラタン？翔、好き！」

M「知ってる(笑)」



O「あ、そういえば昨日鯛釣りに行ってね」

S「海？海に行ったの？翔もねぇ〜こないだ海行ったよ！ザブーンってすごいの！」

M「春に海に連れて行ってやってね。鯛か…クレソンとカルパッチョにしよっかな」

O「そうなんだ。今度一緒に釣り行こう！船の上で食べる魚肉ソーセージが美味いんだ」

S「行きたい！ねぇ潤」

M「その前にお風呂で水に顔をつける練習しないと。」

S「ぶぅ…」

O「ふふ(笑)頑張って。ねぇ早く雅紀ん所いこ」



雨はまだ降り止まない。

蛙の声が緑の中に響きわたる。



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