夜空を紡ぐふたり

パーティータイム ページ21

M「うん。やっぱり王道だね。キュウリとハイボール合う」

N「でしょ？雅紀ウィスターソース取って」

ニノがポテトサラダにドバドバとかけて、パンにのせる。

A「レタスも美味しいよ。綺麗だね」

O「ありがと。レタスはグラデーション出すのが難しいんだよね〜」

智はハムと卵、チーズをのせたパンをトースターで焼いて一人アレンジ。

N「翔ちゃん、入れすぎ(笑)」

欲張って具をはさみすぎたサンドイッチで翔の頬がパンパンだ。

M「もう…お口拭いて。次はどれ？」

潤がかいがいしくパンを手に取り、翔が指さすイチゴをサンドイッチにしてやる。

A「くふふ、翔ちゃん甘えん坊さん！ねぇ、唄おう〜」

O「久しぶりだね。やろやろ」

智が店の隅のウッドベースを抱え

ニノはリュートを棚から下ろすと
ギターのように智とチューニングを始める。

そこに雅紀のサックスが加わり

やっと翔がサンドイッチを飲み込んで、ピアノの前に腰掛ける。


M「準備OK？1, 2, 1234！」


パーカッションの潤に合わせて、奏でるのは、潤たち職人の通った学校の校歌。

さまざまな職人の卵を育成するこの学校は、全寮制で、翔は後輩だが４人はほぼ同級生。

別名ファイトソングなどと生徒たちは呼び、ハードな勉強の合間に、親元を離れて淋しい夜に、それぞれの過程を終えて新しい修業の旅へ巣立つ仲間に

折にふれて、この歌を皆でうたい笑ったり泣いたりしてきた。

そして今でも。
良き仲間との再会に彼らは唄う。

…


M「…飲みすぎなんだよ」

潤の背中には熟睡の翔。

O「送ろうか？」

M「大丈夫。酔い冷ましに歩くよ」

N「ったくコレだけは離さないし(笑)」

熟睡なのに翔の右手は、潤の好物のパンの耳の袋をがっちり掴んでいる。

A「…大好きだもんね？」

雅紀が優しく翔の頭を撫でる。

M「じゃあね。あ、スミレのあんパン美味かった。また店に出したら教えて」

N「了解！気をつけて」

カサ…カサ…

丘の上の実験室へ戻る坂道。
歩みをすすめるたびに、パンの袋がふんわりと香ばしい匂いをたてる。

S「…潤ぅ。潤の好きなパンだよぅ」

嬉しそうな寝顔に微笑んで、よいしょと抱えなおして後ろを見れば

バオバブの木の上で手を振る三つのシルエットが大きく揺れている。

.

雨蛙　→←緑の呼び鈴

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す