家出ネコちゃん ページ5
「なあ、お前…家帰んねぇの?」
「帰るとこ、ねぇもん」
…参った。どうしたもんか。
俺の向かいに座って、拗ねたような顔して、体育座りしてる金髪頭の…明らかに『不良』と言われる少年を見て堪えられずにため息が出た。
そんな俺の様子に、強がってるけど、クリっとした目はちょっと潤んでる。そこんとこは、まだまだ子供だな。やっぱ。
「…俺、めーわくだよね」
「………まあ、」
「っ!!………ゎかった、出てくわ」
俺の言葉に、零れそうになった涙を強引に拭って、勢い良く立ち上がった。薄っぺらい学生鞄を取って足早に出ていこうとするその腕を慌てて掴むと、振り向いた頬に隠しきれなかった涙が流れてた。
「待てって!翔くん!……出てって、どーすんだよ」
「…、そ、それは…前みたいに『たちんぼ』するよ」
「へえ、売春する勇気ついたんか?」
「っ!!」
ほら、傷ついた顔して。
覚悟も行くところも決まってない子供を、追い出せるほど俺も鬼畜じゃない。残念なことに。ああ、もう。
自分の中で葛藤していると、翔くんが俺の手を振り
ほどこうと暴れだした。
「智くんに、関係ないだろっ!」
「あるから引き留めてんだろ!バカ!!」
「嘘だ!……智くんだって、俺を引き留める勇気ないくせに!」
「っ!!」
こんにゃろ。子供のくせに核心突きやがって。
翔くんの腕を掴む手に力が入る。確かに、……確かに翔くんの言うとおり、俺も勇気がなくてこんな中途半端なことをしてる。
事の発端は、1週間前。
所謂、ホテル街の一本裏の道の『たちんぼ通り』に翔くんは居た。それは、売春する子達が一夜の相手を求めて立っている通りで、いつもは通らないその道を、通ったのも偶然。
「ゃ、やだっ!」
「ここに居といて何言ってんだよ!…相手、探してんだろ?」
バイト続きで疲れた体を早く休めたくて通った近道で、揉める声に勘弁してくれと思って視線を上げたら、抵抗してる少年ーー翔くんと目があった。翔くんは、今にも泣きそうで、でも気丈に体を引き寄せようとするオジサンに抵抗してて、目があった俺のことも睨み付けてた。
「し、知らない…探してない!」
「そんなわけないだろ?……困ってるなら、助けてやるよ。イロイロと」
下卑た笑いが、気色悪いヤツだなってそう思ったのと、助けてって言わない気丈さと強い目に惹かれて、思わず、仲裁に入ってしまった。
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大翔(プロフ) - きよさん» リスの翔ちゃん自分でもどこで書いたか忘れてた作品だったんで笑笑覚えててくださって本当に嬉しいです!今でも2人とも幸せに暮らしてるそうですねー!また思い出したら書くのでこれからもよろしくお願いします! (2021年1月22日 0時) (レス) id: 52be1d4475 (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - 子リスの翔ちゃん、智くんと無事に暮らしていたんですね。良かった(^-^)/ 酔ったとはいえ智くんを振り回す強者!大人の翔ちゃんはどんなでしょうか続編楽しみにしています。 (2021年1月21日 13時) (レス) id: ae2dee5c90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:大翔 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年10月6日 22時