さくらこ’s 短編集 (ページ33)

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「、かずく」

『風邪治ったらAの行きたいとこ行こ』

「え、」

『だから嫉妬してる暇あったら早く風邪治しな』

「…っ」

嫉妬ってバレてる…

「…和くん」

『ん』

「すぐ治す」

『ふっ、うん』

和くんは笑って私の頭をぽんぽんと撫でてくれた。

『じゃ、行くね』

「うん」

私から離れて、部屋を出て行こうとした和くん。

一瞬ためらった後、私は「…和くん、」と呼び止めた。

『ん？どした、何か必要？』

「ううん、いらない」

『じゃなに？』

「あの…ありがとう」

お礼を言うタイミングではなかったかもしれない。

和くんは“急にどうした”みたいな顔で私を見つめてる。

でも、いつも中々言えなくて言いそびれることが多いから、言おうと思った時にちゃんと言わなきゃって思ったんだ。

「色々してくれてありがとう」

『何よ急に』

「嬉しかったから」

『当たり前でしょこれくらい。一応あなたの彼氏なんで』

そう言いながらも少し照れくさそうな和くんに、うんと頷く。

「引き止めてごめんね。行ってらっしゃい」

『ん、行ってきます』

和くんが玄関のドアを閉める音を聞きながら、目を閉じる。

さっきまですごく怠かったはずなのに、今は少し落ち着いてる。

きっと和くんのおかげだなぁ…

早く治して、和くんと一緒に行きたいとこ考えよう。

ワクワクを胸に、私は眠りに落ちた。