さくらこ’s 短編集 (ページ32)

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薬を飲み終わっても、和くんは戻ってこなくて。

もう横になっちゃお…

だるい体を横にして、天井をぼーっと眺める。

私には病院とか医療とか、内部の詳しいことは分からない。

でもその中で医者にとって看護師がパートナーとして重要な存在なんだろうことは知ってる。

和くんにもきっとそういう人がいる。

…って、何考えてんだろ。

仕事は仕事じゃん。

弱ってる時は余計なこと考えがちだからほんとやだ。

はぁ、と息を吐いたら、ガチャとドアが開く音がした。

『寝た？』

「ん…」

『あ、まだ起きてた』

和くんが顔を覗き込んでくる。

『俺もう病院戻るから』

「うん」

『たぶん早く帰んのは無理かも』

「…うん」

『お前の世話だけなら楽なんだけどね。そうもいかないから』

「いいよ。患者さんのお世話してあげて」

『さっきはお世話してとか言ってたのに』

「私はこれだけで十分だよ」

和くんの家にいられるだけで、和くんの匂いを感じられるだけで十分。

『…そ』

「うん」

行ってらっしゃい、と言おうとした。

でもその前に和くんの手が私の頭に触れた。