さくらこ’s 短編集 (ページ31)

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和くんちに着いて、すぐに寝室に向かう。

『はい、これ』

和くんちに置きっ放しのお泊まり用のパジャマを手渡してくれる。

ベッドの横で何やらガサゴソし出した和くんを気にしながら、急いで着替えた。

ベッドに入って枕元に背中を預けると、自然と重い息が漏れる。

『ゼリーなら食べれる？』

「ゼリー…？」

『何か少し食べて薬飲まないとダメでしょ』

「あ…うん。ちょっとなら食べれる」

『ん、じゃあこれ』

差し出してくれたフルーツ入りのゼリー。

「…いつ買ったの？」

『お前が薬貰ってる間』

そう言いながら、ベッドサイドテーブルに水やポカリのペットボトルを置く和くん。

さっきガサゴソしてたのはこれだったのか…

『食べる気しない？』

「あ、ううん。食べる」

蓋を開けてゼリーを食べ始めた私の横で、和くんもコンビニのおにぎりを頬張る。

「時間、大丈夫なの？」

『まだ平気』

「、そう」

すぐに会話が途切れて、食べる音だけが部屋に響く。

「…和くん、モテるんだってね」

『は、急だな』

不意に零れた言葉に、自分でもそう思う。

でも口に出ちゃったからにはしょうがない。

「看護師さんが言ってた」

『患者に何の話してんだか』

「自分でも自覚あるの？」

『んーまぁ、こそこそ話してる声くらいは耳に入ってくるかな』

「そうなんだ…」

彼女いるってみんな知らないみたいだったから、和くんのこと本気で好きな人多そう。

そりゃモテるよね、カッコいいもん。

『手止まってますけど』

「、…もういいや。食欲ない」

蓋を閉じてサイドテーブルに置き、薬を飲もうと袋を手に取る。

すると和くんはおにぎりのゴミをコンビニ袋に入れ、私の残したゼリーを持って部屋を出て行った。