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少し離れたその場所に立ってるその人は、どこか虚ろな目で海を見つめている。
ドキドキ速くなる心臓を抑えて、ゆっくり近づく。
「翔くん…？」
震える声でその人の名前を呼んだら。
引き寄せられるように私の方に顔を向けて。
翔「A…」
私の名前を呟いた。
「っ、翔くん…っ」
私を捉えた翔くんの瞳がゆらっと揺れる。
翔「A」
「翔くんっ」
もう抑えることなんて知らずに私は駆け寄って、勢いのまま翔くんに抱きついた。
「翔くんっ会いたかった…っ」
翔「っ、A…」
泣きじゃくる私を、翔くんは強く抱きしめ返してくれた。
「っ、どうして…」
翔「ごめん…ほんとに、ごめんな」
「ずっと、ずっと待ってたんだよ…っ」
翔「ごめん…」
「なんでっ」
思いの丈を翔くんにぶつける。
翔「…向こうに行って、自分がどれだけ勝手なことしてるか考えたら、Aに申し訳なくなったんだよ。俺のことは忘れてもらおうと思って連絡するのやめたんだ」
「、そんな…」
ひどいよ。
そんなことまで勝手に決めるなんて…
翔「でも俺が忘れられなかった」
ぽつりと呟かれた苦しげな声。
翔「Aに会いたくて会いたくてたまんなかった」
「っ、翔くん…」
翔「Aはもう俺のこと忘れてるかもしんないし、でも俺は会いたいし、どうすればいいか分かんなくて」
「っ、」
翔「とりあえず日本に帰ろうと思って帰ってきたけど、探すにも探せなくて…そんで辿り着いたのがここだった」
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作者名：さくらこ | 作成日時：2017年8月3日 23時
