さくらこ’s 短編集 (ページ30)

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手際よく点滴を外した看護師さんに、職員駐車場の場所を教えてもらって。

受付で診察代を支払った後、隣接する薬局で薬を貰う。

全部終わった私は、和くんに言われた通り駐車場に向かった。

入り口で立ち止まって、辺りを見渡しても和くんの姿はない。

なんでここに来いって言ったんだろ…

待ってるとは言ってなかったから、和くんは来ないのかな…

その時、視界の端で動いた一台の車。

見覚えあるそれは、すーっと私の前まで来て止まった。

『後ろ乗って』

運転席に座ってたのはもちろん和くん。

窓を開けて、私にそう言った。

「え…」

『時間ないから早くして』

「、はい」

後ろのドアを開けて私がちゃんと座ったのを確認した和くんがすぐに発車させる。

もしかして、家まで送ってくれるの？

「…和くん、仕事は？」

『今、昼休憩だから平気』

「、でも私の家まで遠いよ。もし送ってくれようとしてるなら」

『そんな遠くまで行かないよ』

「え？」

『俺んち連れてく』

「えっ」

『どうせしばらく安静にしてなきゃいけないんなら、1人じゃない方がいいでしょ』

確かに、風邪で1人で家で寝込んでるのは辛い。

でも。

「和くんの迷惑になるし、それに風邪移しちゃうかもしれないし…」

『俺の職場、病院だよ？お前の風邪くらいで移んないよ』

「あ…」

『まぁ迷惑はここに来た時点で迷惑だけど』

「っ、」

『弱ってる時くらい構ってやんないとかわいそうだしね』

嫌味ったらしい言い方だけど、心配してくれてるんだと思う。

なんだかんだ言って優しいのが和くんだから。

でもそんな和くんに、素直にありがとうと言えない私。

「うん…構って」

『ったく、世話の焼ける子だね』

「和くんがお世話して」

『はいはい』

和くんは面倒くさそうに、でもちゃんと応えてくれた。