さくらこ’s 短編集 (ページ26)

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「え、」

智「もういいでしょ？」

「っ、」

優しいキスとは裏腹な、小ちゃな子供みたいな口調に、胸がきゅーっと締め付けられる。

大野先生。

今なら私、もう…

智「うぉっ」

いきなりぴょんと飛びついた私に、先生が驚いた声を上げた。

今までは私から先生に触れることなんてできなかった。

距離を縮める勇気なんて、これっぽっちもなかった。

でも今ならできる。

今なら先生がちゃんと受け止めてくれるから。

「先生好き」

智「ふふ、うん。俺も」

笑う先生の吐息が耳にかかってくすぐったい。

体をゆっくり離すと、私を見つめる大野先生と目が合った。

ち、近い。

恥ずかしくてもっと離れようとしたら、先生に左手を捕まえられた。

智「離れんなや」

「っ、だって、近い…」

智「さっき飛びついてきたじゃん笑」

「、そ、ですけど、」

智「ここにしてほしい？キス」

「っ、！」

急に私の唇にとんと触れた、先生の人差し指。

どくん、と心臓が跳ねる。

「っ、あ、あの」

智「しないよ、まだ」

「え」

智「唇は学校の外出てからね」

大野先生がいたずらっぽく笑う。

「っ、もう先生っ」

智「ふへへっ笑」

大人な大野先生に比べたら、まだまだ子供な私。

でも今日で一歩大人に近づく私を。

これからもよろしくお願いしますね、先生。