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卒業式当日。
式を終えて、写真を撮ったり寄せ書きしたり、騒がしい教室を抜け出す。
友達にどこ行くの？なんて言われたけど、お手洗いと言って誤魔化した。
そわそわする気持ちとともに向かった先は、もちろん美術室。
ふぅと深呼吸をしてから、ドアをノックした。
「…」
あれ…？
返事がない。
先生いないのかな。
どうしよう、と困っていたら。
智「ん、あ、高倉？」
「っ、大野先生、！」
声が聞こえた先を見ると、大野先生が相変わらずの猫背姿で歩いてきた。
けどいつもと違う。
ちゃんとピシッとしたスーツ着て、髪もきちんと整えられてる。
それだけでドキドキしてしまう。
智「卒業おめでとう」
「、ありがとうございます」
智「美術室入る？」
「あ、はい」
ドアを開けた先生の後ろに続いて美術室に入る。
ここに来るのも今日が最後。
智「俺に会いに来たの？」
懐かしむように美術室内を見渡していたら、先生が不意にそう言った。
「っ、え」
智「あれ違った？」
「あ、いやえと…会いに来ました、先生に」
しどろもどろになりながら答えると、大野先生はどこか嬉しそうに笑う。
「…今日で最後なんて信じられません。まだこれからもここで先生が絵を描くの眺めてたいです」
光沢のあるジャケットを脱いでワイシャツの袖を腕捲り。
だんだんいつもの大野先生に変わっていく姿を、目に焼き付けるようにじっと見つめる。
智「じゃあ留年する？」
「、えっ」
智「そしたらまだここにいれるよ」
「、やそれは…大学受かっちゃったし、」
智「そっかぁ」
「…あの先生」
智「んー？」
「第一志望、受かりました」
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作者名：さくらこ | 作成日時：2017年8月3日 23時
