さくらこ’s 短編集 (ページ3)

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一人、駅までとぼとぼ歩く。

帰るとは言ったけど、まっすぐ家に帰りたい気分ではないんだよなぁ…

あ、そうだ…

ふと思い立って、私は家とは反対方向の電車に乗った。

電車に揺られて向かった先は。

「着いたー」

電車を降りて少し歩くと、気持ちいい潮風が吹いてきた。

そう、海。

毎年夏に翔くんと来ていた海。

翔くんが私の前からいなくなった後も、私は夏になると一人でここに来て、ぼーっと海を眺めていた。

海に着いたのはちょうど日の入りの時間。

海も空も、赤や黄やオレンジの混ざった綺麗な色をしている。

人はもうほとんどいなくて、静かな空気が流れていた。

砂浜に降りて、サンダルのまま海沿いを歩く。

「はぁ…」

海に不似合いなため息がこぼれる。

また今年も一人でここに来ちゃった。

この習慣、いつまで続くんだろうな…

“絶対戻ってくるから。待ってて”

あの時の翔くんの言葉。

この言葉を信じて、まだ翔くんからの連絡を待ち続けている私はおかしいのかな。

でも待っててって言ったじゃん。

だから私は忘れられずにずっと待ってるのに。

連絡が途絶えても待ってるのに。

「翔くん…会いたいよ…」

心の声が漏れる。

不意に泣きそうになって、顔を上げたら。

そこにいるはずのない人の姿が目に入った。