さくらこ’s 短編集 (ページ12)

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「えっすごい！めっちゃよく見える！」

和「だから言ったろ？行く必要ないって」

「すごい！こんなに見えるとは思ってなかった！」

和「俺のこと信じろや」

そこまで期待してなかったことに拗ね気味の和くん。

「ふふ、ごめん。ありがとね和くん！」

ぎゅっと抱きつくと、「くっつくな暑い」と腕をぐいぐい押してくる。

でも口元は緩んでるし、耳は赤い。

もう素直じゃないんだから。

可愛いなぁと思って、抱きついたまま花火を見上げる。

和「A」

「んー？」

名前を呼ばれて、顔を向けると。

「っ、！」

和「もーらい」

目の前には、してやったりな和くんの顔。

「っ、和くん！」

なに今の。

不意打ちキス！！

「もう！」

和「顔真っ赤笑」

「だって和くんが！」

和「あーうるさいうるさい。お前ほんとに人混み嫌いなの？お前1人で10人分くらいのうるささなんですけど」

そう言いながら顔をしかめて耳を塞ぐ。

「大げさだし！今のは和くんのせい！」

和「あー分かったって。ほら花火見よ」

ぽんぽんと私の頭を撫で、空を見上げる和くん。

結局いつも和くんのペースなんだよなぁ…

そう思いつつ、花火に目を向ける。

すると、ベランダの柵に置いた私の左手に、和くんの右手が触れた。

優しく包み込むように重なる手。

横を見ると、和くんは花火の方に目をやったまま。

ふわっと心が温まって、私も何も言わず花火に目を戻した。

和くんのペースに飲まれてばかりだけど、そんな毎日も悪くないし、むしろ好き。

二人きりの空間で、花火が終わるまで私たちはずっと手を繋いでいた。