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翔「そういえばさぁ、」
ソファの背もたれに体を預けた櫻井先生。
翔「前になんか、お礼にって飴くれたことあったじゃん」
「あぁはい、洋書貸してくれたお礼にあげましたね」
翔「そうそう。あれさぁ…」
そこで言葉を止めた先生を不思議に思ってちらっと見ると。
何だか恥ずかしげに口をむーってしてる。
え、なに。
「あの飴がどうかしたんですか？」
翔「ん、いや、飴がっていうか」
「はい」
翔「俺さ、もっと凄いもんが出てくんじゃないかって期待しちゃったんだよね」
「…え？」
翔「飴でもすごい嬉しいんだけどさ、なんかもっと特別なもんをくれるんじゃないかって」
特別な、もの。
翔「何言ってんだ俺。ごめん、気にしないで」
「先生、私…ほんとは、違うものあげるつもりでした」
恥ずかしさを誤魔化すように笑う先生にそう言うと、えっ、と驚いた声をあげた。
「ほんとは…手作りのクッキーをあげるつもりだったんです。でも先生へのお礼が手作りのものってやっぱりおかしい気がして。結局夏海にあげちゃって、鞄の中に飴しか入ってなくて飴になっちゃったんです」
翔「…そう、だったのか」
「はい、だから…特別なもの、あげるつもりでした」
“特別なもの”と言うとき先生の方を見たら、優しく微笑んで「嬉しい、ありがとう」と言ってくれた。
翔「あーでも欲しかったなぁ。手作りのクッキー食べたかったなぁ」
「じゃあ今度作ります、あ、今日作って明日持ってこようかな！」
翔「今日はだめ、寝不足なんだから早く寝なさい」
「あ、ふふ、はい、じゃあ今度」
翔「うん、楽しみにしてる」
頑張っちゃおう、と呟いたら、先生は大きな手で頭をぽんぽんと撫でてくれた。
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作者名：さくらこ | 作成日時：2017年1月26日 20時
