105 Ayano side ページ23
翔「…っ」
言葉に詰まる翔くん。
綾乃「今の俺には、って、そういうことだよね？」
ほんとは聞きたくないよ。
私じゃない他の人、しかも生徒に対して好意を抱いていることなんか聞きたくない。
でも、はっきりさせないと区切りをつけられそうにないから。
ちゃんと話して。
翔「…ほんとに、ごめん」
苦しげな声。
翔「好きだって思う人が、いる…
だから、綾乃とこのまま付き合い続けることはできない」
綾乃「…うん」
翔「っ、ほんとに最低だと思う、ごめん」
綾乃「…うん」
ちゃんと受け止めなきゃって。
喉元が熱くなって、涙が零れそうになるのを堪える。
翔「もっと早く俺自身がこの気持ちに向き合ってれば、こんな形で綾乃を傷つけずに済んだかもしれないのに…」
ごめん、って何度も繰り返す翔くん。
後悔したってもう遅いよ。
過去を変えることはできないんだから。
綾乃「ねぇ…」
もう一つ聞かせて。
翔「、ん…？」
綾乃「あの子とは…どうするの」
翔「っ、」
綾乃「もしかして、もうそういう関係に」
翔「っ、違う。これはっ…俺の一方的な想いなんだ、だからどうなるかは…分からない」
綾乃「…」
顔を歪めて俯いた翔くんに、それ以上問い詰めることはできなくて。
今までありがとう、と言って、私たちは完全に別れた。
.
どうして小林さんを好きになったの。
小林さんのどこに惹かれたの。
遠くの2人を見て、抑え込んでいたモヤモヤがふつふつと沸き起こる。
一方的な想いって言ったけど、翔くん、あなたは女子生徒にどれだけ好かれてるか自覚してないの。
小林さんだって翔くんに好意を向けられたら好きになるに決まってる。
そしたら2人は…付き合うの？
禁断の関係だとしても、構わず2人は想い合うの。
胸がズキッと痛むのを感じて、私は2人から目を逸らして体育館の中へ入った。
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作者名：さくらこ | 作成日時：2017年1月26日 20時
