[暁のヨナ]君にあえて良かった 3 (ページ5)

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幸せページ5

その夜、Aは海岸をブラブラと歩いていた。
すると聞こえてくる、二胡の音。ジェハだ。ヨナもいた。

グギギギギー

貴:ぶっふ！
ヨ:え！？A！？
貴:よ、よぉwwヨナ、酷い音だなぁw
ジ:はは、海賊の方が向いてるみたいだね。
ヨ:琴と舞なら少しは出来るわ。
貴:琴と舞かぁ…。ふふっ、ジェハ、ちょっとその二胡貸して。
ジ:ああ、いいよ。
貴:よっ…と。

Aが二胡を奏でる。ほんの少しぎこちないけど、優しい旋律。

ヨ:素敵な音色ね。Aはいろんな楽器が弾けて羨ましい。
貴:そうでもないよ。鍵盤楽器は苦手だし、弦楽器は物によるしな。

Aが演奏しながら答える。

ジ:…それ、なんて曲なんだい？聞いたことのない曲だけど。
貴:なんだったかな………たしか…「芝桜」、だったかな？昔、知り合いの楽器職人が教えてくれた。…けっこう好きなんだ、この曲。
ジ:………。

演奏が終わる。柔らかな余韻を残したまま、二胡の音は波に消えていった。

貴:ありがとう、ジェハ。久し振りに弾けて楽しかった。((ﾆｺ
ジ:どういたしまして。
ヨ:A、もう寝るの？
貴:ん、そうしようかな。…ヨナも早めに寝ろな？
ヨ:ええ、わかってる。

そう言ってヨナ達と別れる。

貴:………皆酔いつぶれてる。飲みすぎだよ、まったく…。

そう呟きながらシンアの隣に腰掛ける。シンアも寝ていた。Aはそれを見て微笑むと、首に下げている笛を吹き始めた。

♪～♪♪～♪♪～♪♪♪～♪

勿忘草、という題の曲。彼女の父親が、唯一教えてくれたもの。
勿忘草の花言葉は、「私を忘れないで」

実はここに来る間にも、こうやって夜にこの曲を吹いていた。
今日も、思い出を、家族を、あの日の恐怖を、痛みを、悲しみを、そして、今までのあいだ支えてくれた人々を忘れないように、この曲を吹く。
終わりに近くなると、笛を口から離し、歌を口ずさむ。

貴:～♪…僕の傍ら小さく咲いた瑠璃色の花君が遺したもの「私を忘れないで」と…♪

歌い終わると、シンアの隣で、木の幹に体を預け、シンアの方に顔を向けて呟く。

貴:俺は幸福者(しあわせもの)だ。小さい頃にあんな事がなければ、今ここで、皆に会えなかったかもしれない。でも今は、こんなに素敵な仲間に、皆に出会えた。

俺は今、幸せだ。