７(Ｓ) ページ7
．
翔「あっつ……」
首元のタオルで頬に垂れてきた汗を拭う。
休憩所に入ってからも汗が止まらない。
もう9月も終わるというのに異様な暑さだ。
『山崎土木』
俺はこの小さな土木会社に中学卒業後からずっとお世話になっている。
初めこそアルバイトだったものの、しばらく経つと正社員として雇ってもらえることとなった。
もちろん、土木作業員としてだが。
山「お前もえらくマッチョになったもんだ」
そう言って俺の二の腕を叩いてくるのは、ここの社長である山崎さん。
本人が社長と呼ばれるのを嫌うため社員はみんな山さんと呼ぶ。
年齢は……推定50歳前後。
聞いても教えてくれないのだ。
山「もう何年になる？」
翔「中卒からだから……5年半くらいっすね」
山「はは、もうベテランか。それにしてもお前……いつの間にかこんなに成長しやがって」
そう言って俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
まったく、汗だらけだってのに……
翔「山さん、なに父親みたいなこと言ってんすか(笑)」
山「父親ねぇ……まあ、間違いではないな」
翔「え？？」
山「ハハ、そんな顔すんなって。少なくとも俺はこの5年間、お前のこと息子のように思ってきたってことよ。」
翔「………」
山さんはフゥーとタバコの煙をゆっくりと吐いて、また口を開いた。
山「まだ中3だったお前がさ、『中学卒業したらすぐに働かして下さい』ってバイトの面接来たときはまあビビったよ……」
翔「はは、そうでしたっけ？」
山「……お前、覚えてないのか？」
翔「……まあ」
あの頃のことは……
覚えてないのか、思い出したくないだけなのか、、正直なところ自分でも分からない。
山「そうか。」
山さんはトントンと今度は優しく俺の肩を叩き、去っていった。
その後ろ姿はかっこよくて、、
大きな背中は山さんの広い心を表しているように思えた。
____"お前のこと息子のように思ってきたってことよ"
さっきの山さんのセリフが頭の中でリピートされる。
両親を失った俺が唯一信頼できた大人。
もし山さんがいなければ、きっと俺はだいぶ前に潰れていた。
翔「……ありがとッ……ございます」
目を閉じながら絞り出した声は
酷く掠れていて、震えていて……
ああ、俺、泣けてるんだ
って思えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 78人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねね(プロフ) - Sakuraさん» はじめましてSakuraさん！山コンビとにのあい最高ですよね！楽しみだなんてありがとうございます(o^^o)これからも地道な更新となりますが、よろしくお願いいたします！ (2015年10月15日 23時) (
レス) id: 018911d0d3 (このIDを非表示/違反報告)
Sakura - はじめまして、こんにちわ。山コンビとにのあいコンビ私はこのcpが好きなので書いて頂いて嬉しいです。いつも楽しみにしてます！ (2015年10月15日 16時) (レス) id: ba626eb6c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ねね | 作成日時：2015年10月5日 22時
