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「迷惑かかるんだよ。それが私と君だけならいい。
…だけど、君はアイドルで、おっきな事務所に所属していて、11人の仲間と活動しているんだよ。
君は頭を下げるだけでいいかもしれないけど、君の尻拭いをするのは事務所で、苦楽を共にしたメンバーたちなんだよ」
「それでも、Aちゃんと離れたくない」
『ふう、すみません。もう一発いいですか？』
『だめです』
ペットボトルを構えて殴る素振りを見せれば慌てて止めにくるリーダーさん。
…けちだなあ、まったく。
振り上げた腕を下ろし、腕を組んで彼を見る。
どうして君が泣きそうなの。
君はなにも知らない。
私がどんな気持ちでここへやって来たのか。
私がどんな覚悟でここへやって来たのか。
決めるのも諦めるのも簡単じゃなかった。
私だって君と離れたくない。
叶うなら死ぬまで君の隣にいたかった。
私が彼の隣にいることで傷つく人がいるのなら。
離れる道を選ばなければならないでしょ？
「君はTREASUREの浜田朝光でしょ？」
「好きな人も幸せにできひんような俺がアイドルになれるわけない」
「…なれてるよ！君はすごくかっこよくて、きらきらしたアイドルになれてる！」
それでもなお目をうるうると潤ませる彼の頭に優しく手を置いた。
「私は幸せだよ。アイドルとして活躍してる君の姿を見れることが。
君は知らないだろうけど、私に夢を伝えたときの君の目はすごく輝いていたんだよ。
無表情で何考えてるかわかんないって言われる君がだよ？」
だから大丈夫。君なら、きっと。
「私は私の意思で君から離れる道を選んだの。
大丈夫！絶対できる！…だからね、私の気持ちを理解してほしいんだ」
泣かない。
私が泣けば彼はもっと泣いてしまうだろうから。
「君はずっとずっと私のヒーローだよ」
精一杯笑った。…変な顔になってないかな。
「ひーくん、愛してる」
私の最後の悪あがき。
名前を呼んでしまえば消えてしまいそうで怖かった。
終わりにするためには私が乗り越えないといけない。
私たちには�爐泙震斉��瓩皚爐泙榛Ｅ扠瓩發覆い�ら。
彼の唇に優しく触れて、私はその場から去った。
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作者名：山桃 | 作成日時：2024年1月12日 16時
