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『私と君とじゃ住む世界が違いすぎる』
「そんなことない!」
『…そんなことあるの!君はアイドルで私は一般人!
肩書きも立場も違うの!背負うものが違うの!』
「違わん。俺たちは変わらん」
『君と私が変わらなくても周りが変わる』
「そんなん覆せばいい。認めてもらえるように」
『君が認めてもらえるように?それとも、私が認めてもらえるように?』
こくりと口の中を飲み込んだ。
彼女の揺れた瞳は掴みどころがなかった。
『どうして答えられないの?…何も考えてないんだね。
こんなに考えてるのは私だけ?』
「違う、Aちゃんのこと考えてる」
『幸せな未来だけを?』
「なんで今日そんな意地悪なん?俺、なんかした?」
「いつものAちゃんじゃない」そう言えば、彼女は悲しげに笑った。
言い合いがヒートアップして止まらない俺たちを見かねたヒョンソギヒョンが声をかけた。
『ヤー、ふたりとも少し落ち着こう、な?』
どうどう、と咎めながら俺とAちゃんに水を渡してくるヒョン。
今そんな場合じゃないんですけど。
『君は私とどうなりたい?』
「一緒にいたい」
『それならどうして君はアイドルになったの?』
「…え?」
『私と一緒にいたいなら、どうしてアイドルになんかなったの?』
「アイドルになんかってそんな言い方なくない?」
『君は選べないんでしょ?私かグループか、私かファンか。』
彼女の言葉が図星でなにも言えなかった。
彼女は俺が選べないことを初めから知っていた。
『君は私とアイドルどっちが大切なの?』
「どっちも大切だよ」
『ふふ、欲張りだねえ、君は。』
けらけらと悲しげに笑う彼女にある1種の疑問を抱いた。
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作者名:山桃 | 作成日時:2024年1月12日 16時