病 (ページ34)

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Asahi side

「アサヒ見て！」

ライブ終わり、俺の目の前にスマホを突き出してきたハルト。
その手の中の画面には一枚の写真が映っていた。

しかもただの写真じゃない。
今日のライブ会場で撮ったと思われる女の子たちのツーショット。

そのうちの一人は見間違えるはずのない、今日、タオルを上げた彼女が笑っていた。

「…かわいい」

「重症やん」

ハルトの手からぶんどったスマホを見つめる。
投稿主のコメント欄になにやら書かれている。

うむうむ、なるほど。
アンチとかじゃなくて安心した。
俺たちの関係がばれていないことにも胸をなでおろした。

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【写真】
@seoa_0314
▷▷ 初コンサートで知り合ったオンニ♡仲良くなりました♡

#TREASURE #TREASUREコンサート

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ちょーかわいい

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この人アサヒからタオルもらってた人じゃない？

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タオルもらったときアサヒからなにか話しかけられてませんでした？

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この人の近くにいたけど、すごく泣いてた

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感動の涙とかじゃなさそうだったよねー

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別になにもないけれど胸がぞわぞわする。嫌な予感に似た何か。

このむずがゆいような、それよりももっと黒いなにかが俺の胸を取り巻いて絡みついて離れなくて、ただ、嫌な不安感に襲われる。

彼女に会いたくて楽屋に来てほしいと頼んだ。
彼女は来てくれると言った。

なにを話そう。
彼女と話したいことなんて山ほどある。

楽屋のドアが叩かれ、彼女だと確信する。

「Aちゃん」

ドアの向こうに立つ彼女はいつもとは違った。
雰囲気もなにもかも。

「コンサートすごかった。私、曲も知らなくて、メンバーさんも全員きちんと覚えられていなかったのにすごく楽しかった！」

「ほんま？うれしいなあ」

「それでね、君に伝えなきゃならないことがあって」

「伝えなきゃならないこと？」

首を縦に振って笑う彼女があまりにも綺麗で、見惚れてしまう。

そんな彼女の手を握り楽屋へ招き入れ、座るように促すも、彼女は俺の手を離して座ることもしなかった。

「座らんくていいの？」

小さく頷いて、ゆっくりと息を吸って。
何かを決意したような、真っ直ぐな目で俺を見た彼女は言った。

『もう、終わりにしよう』

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