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「びっくりさせてしまってごめんなさい」

「いや、大丈夫です」

「ぼくのなまえは、じふん、っていいます」

「ジフン、さん」

「あなたのなまえは?」

「A、です」

「Aさん、おねがいがあります」




お願い?首を傾げる私にこくりと頷いてみせたジフンさん。



「ぼくたちは、いま、とてもたいせつなときです。…だから、あさひと、もういちど、こいびとにならないでください」




頭を鈍器で殴られたようだった。
衝撃で、ただ、言葉が出なくて。


ジフンさんの言葉をゆっくり咀嚼して、飲み込んで、震える唇でなんとか絞り出した声はあまりにも弱々しくて情けなかった。



「…はなし、聞いてもらえますか?」



もしかしたら、たぶん、きっと。
私は誰かに話を聞いてほしかったのかもしれない。
心のどこかで、この気持ちのはけ口を探していたのかもしれない。



「ぼく、かんこくじんだからうまくききとれないかもしれないです」

『大丈夫ですよ、私、韓国語話せますから…』

『やー!それなら早く言えよー!』







なにこの人急に馴れ馴れしいんデスケド。



態度の変貌ぶりに驚きつつも、ぽつりぽつりと言葉をこぼして、拙い韓国語で聞き取りにくい言葉をジフンさんは耳を傾けて真摯に聞いてくれた。





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作者名:山桃 | 作成日時:2024年1月12日 16時

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