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「Aちゃんはアサヒの元カノなん?」
やっぱり気になるかあ。
韓国語なら知らないふりできるけど、日本語で聞かれたなら無視できないしなあ。
私と彼の過去の思い出は、私にとってはしまっておきたいもので。
鍵をかけて忘れたいもので。
「あー、まあ、うん」
歯切れ悪く答える私にヨシくんはなにか察したのか、無理に聞いてごめんね、と謝った。
ヨシくんは何も悪くないのに。
逆になんだかこっちが申し訳なくなってしまった。
「ヨリを戻す気はないんだよ」
「そうなん?」
「だって、困っちゃうでしょ。みんなが」
言葉につまるヨシくん。私なりの意地悪だった。精一杯の。
そんなとき、からん、とお箸の落ちる音がした。
がやがやとさわがしいはずなのに、その音はやけにクリアに聞こえて、その音を発した人を見るまでもなくて。
「どういうこと?」
「迷惑でしょ」
「迷惑ちゃう、迷惑ちゃうよ」
「そろそろ帰らなきゃ。
…課題まだ終わってなくて。」
彼の手が私を捕まえる前に、私はテーブルから手を離した。
「Aちゃん、待って」
「ごめんね」
彼の悲しそうな顔は知らないふりをした。
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作者名:山桃 | 作成日時:2024年1月12日 16時