病 (ページ1)

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この先も彼の隣で過ごすと思っていた。

だけどそれはあまりにも不確実で、漠然として、不安定だった。

ぐらぐらと音を立てて、私が想像していた彼との未来は崩れ落ちた。

「俺ら別れよう」

頭を鈍器かなにかで殴られたような。

ぐわんぐわんと彼の声がこだまして、理解できなくて、フリーズしてしまう。

「どうして？私なにかしちゃった？」

「Aちゃんはなんも悪くないよ。…俺、夢ができてん」

「…夢？」

「俺、アイドルになりたい」

私を真っ直ぐ見つめる彼の瞳に揺らぎはなくて、ああ、何を言ってもこの子はアイドルになるのだと確信した。

夢を見つけて走り出そうとする人の足でまといになんてなりたくないし、まして私の好きな人ならなおさら。

大好きな彼氏の夢を応援して、離れる道を選ぶ。

突きつけられた現実があまりにもつらくて残酷で、まだ彼と過ごす時間に甘えていたいとすら思う。

…それでも。彼に嫌われたくなくて、物分りのいい女でいたくて、私はすべてを飲み込んで、首を縦に振ることしかできなかった。

「そっかあ、アイドルかあ。…頑張れ！絶対応援する！」

嬉しそうに笑う彼の目に私はいったいどんなふうに映っているのかな。

「ありがとう。俺、アイドルになってAちゃんのこと絶対迎えに行くから待っててくれへん？」

細くて白い手で私の手を握る彼に笑うことしかできなかった。

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