カクテルJUMP、色は赤 1 ページ7
伊野尾の一件から３日が経った夜。
と、言っても山田達は伊野尾の名前すら知らない。
何処の誰で、なぜ自ら命を絶とうとしたのか分からない。
山田は路地裏のBarのカウンターの一番奥で１人、薄めのハイボールを飲んでいる。
そこそこ人気のある隠れ家的なBarなので、手前側のカウンターに男女。
４人掛けテーブル席に３人ずつの２組が楽しそうにお酒を飲んでいる。
薄暗い店内。
８人がけのカウンターを中心に、４人掛けの丸いテーブル席3セットがバランスよくフロアーに配置されている。
ダークブラウンの木目調の床で、壁にはレンガがはめ込まれたモダンカジュアルな作りのBarだ。
カウンターの上にはワイングラスやカクテルグラスなどが綺麗に吊り下げられており、さらにカウンターの奥にはありとあらゆるお酒が棚に置かれている。
マスターは高木雄也という男性。
甘いマスクで長めの前髪から覗く目は色気が漂っている。
そして、ボーイとして有岡大貴という男性も居る。
有岡の人懐っこい笑顔は実年齢よりも幼く見える。
Barの名前は「JUMP」
ただのBarというわけではない。
もちろん普通の一般人もお客も受け入れているが、主に情報屋と裏の社会の人間が情報交換の場としても活用されている。
午後１０時を回ったころ、１人の長身の男がバーを訪れた。
高木「いらっしゃいませ。」
男は無言で迷うことなくカウンターの奥、山田の隣に座る。
高木「今日は何にします？」
常連客と思われる男は、高木と目を合わせることなくつぶやくようにオーダーをする。
男「カクテルJUMP。濃いめで。」
高木「色のご希望は？」
男「赤。」
すると、山田は目だけを男に向ける。
高木はしなやかな手付きで真っ赤なカクテルを作り、男に出した。
男はカクテルを一口飲む。
山田はそれを待って目を合わせることなく話し掛ける。
山田「居た？」
男は無言で胸ポケットから１枚の写真を取り出し、カウンターの上を滑らせて山田に写真を見せる。
写真には繁華街を１人で歩いている伊野尾の姿が写っている。
山田は黙って頷く。
男「名前は伊野尾慧。この繁華街で最近よく見かけるようになったって。ちょっと体に良くないことしてその日暮らしの生活みたいだよ。」
山田「そっか。ありがとう。裕翔。」
山田は優しく微笑んだ。
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作者名：サツキ | 作成日時：2023年11月7日 19時
