拾ったのは犬?猫? 4 ページ6
急に立ち上がったことで立ち眩みを起こしたのか、伊野尾は膝からガクンと崩れる。
山田「あっ!」
咄嗟に伊野尾を支えようと踏み出そうとした山田を薮が無言で右腕を上げて静止する。
山田はびっくりして薮を見上げた後、眉を寄せて心配そうに伊野尾を見つめる。
伊野尾は唇を噛み、顔をしかめながらも片膝をついて再び立ち上がる。
伊野尾「くっ……………」
まだ少しフラついているが、事務所から出て行こうとする。
薮「おいっ!俺たちは『何でも屋』だ。もし、お前が何か『手伝って』ほしいことがあったら、いつでも来い。俺達はここに居る。」
薮がちょうどドアノブに手をかけている伊野尾の背に向かって言葉を投げかける。
伊野尾は一瞬だけ動きを止めたが、振り返ることも答えることもせずに事務所から出て行った。
バタンッと閉まる扉。
山田「薮ちゃん。」
山田はシュンとして薮に話し掛ける。
薮「あいつ、自分から車に身を投げたのか?」
山田「そう。んで、俺が手を引っ張った。」
薮「そうか。」
山田「大丈夫かな…」
山田は、まるで自分たちを拒絶しているかのように閉まっている扉を見つめる。
薮「どうだろうな。」
薮はふぅ〜。と息を吐きながら肩をすくめる。
薮「あの手のタイプは『助け』を求めることを頑なに拒む。」
山田「あっ………。だからあの時………」
山田は目の前を横切って部屋のデスクに向かう薮を目で追う。
薮「そっ。だから『手伝う』。」
薮は再び奥の回転椅子に腰掛ける。
薮「『手伝う』は主導権が向こうだからな。まだ何かしらの余地はある。」
薮はクルッ椅子を回転させ山田に背を向ける。
薮「餌は巻いてやったんだ。食い付くか、食い付かないかは、あいつが決めることだ。」
そう言いながら、背もたれにぐっともたれ掛かり天井を見上げた。
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作者名:サツキ | 作成日時:2023年11月7日 19時