贖罪 １ （改） ページ48
真っ白な６畳ほどの部屋。
部屋の真ん中にシングルベッドが１つ。
そのベッドには仰向けに伊野尾が寝かされていた。
枕も掛け布団もない。
真っ白なオーバーサイズの七分丈ほどの服とズボンを着せられている。
しばらくして、伊野尾の目がゆっくり開き意識を取り戻した。
まだ薬が効いているためか、目はまだ半分ほどしか開いておらず天井を見上げたままボーッとしている。
すると、部屋の扉がゆっくりと開き１人の人物が入ってきた。
スーツ姿の男性で黒部川だ。
黒部川は伊野尾の側まで歩み寄ると、優しく愛おしそうに伊野尾の右頬に触れ、顔の輪郭をなぞる。
伊野尾は尚もぼんやりした意識のまま、顔を黒部川の方へ向けた。
すると、徐々に伊野尾の目に力がこもり始める。
そして、ガバっと勢いよく体を起こし黒部川の胸ぐらに掴みかかった。
伊野尾「お前が………お前がやったんだろ！！」
興奮を抑えられない伊野尾は肩で息をしながら黒部川を睨みつける。
黒部川「伊野尾君。君がいけないんだよ。ご両親に全部話すから。警察になんか行こうと思うから。全部………」
黒部川は胸ぐらを強く掴む伊野尾の手を、自分の両手で包み込むと一呼吸おき、しっかりと伊野尾の目を見て言った。
黒部川「君のせいだよ。」
頭をガツンと殴られたような衝撃が伊野尾を襲う。
黒部川を見る目が困惑のため揺れる。
黒部川の胸ぐらから離された手は、伊野尾の頭を掻きむしる。
伊野尾「違う！僕のせいじゃない！」
心の底から何かドロドロとした感情が湧き出す。
伊野尾はその感情を振り払おうと、めちゃくちゃに喚き立てる。
僕が黙っていたら、家族は死なずに済んだ？
僕が黒部川さんとの約束を破ったから？
全部僕のせい？
伊野尾「違う！違う！違う！僕は悪くない！」
黒部川「違わないよ。全部知ってるよ。君が秘密をバラすからだよ。君が、私を裏切るからだよ。悪いのは君だ。」
黒部川の言葉が伊野尾を追い詰める。
そしてめちゃくちゃに喚き暴れ疲れきった伊野尾の表情は、首をゆっくり左右に振るたびに絶望にみちたものへと変わっていく。
そして、ヘタリとその場に座り込んだ。
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作者名：サツキ | 作成日時：2023年11月7日 19時
