不穏 １ 微※ ページ43
黒部川「伊野尾君、行こうか。」
伊野尾「は〜い。」
伊野尾は元気よく立ち上がるが、足元がおぼつかない。
黒部川「おいおい。大丈夫？ちょっと呑ませすぎちゃったなぁ。」
黒部川は心配そうに伊野尾の腕を掴み、体を支える。
伊野尾「だいじょうぶですって！いつも、ありがとうございます。」
上機嫌な伊野尾をやれやれと呆れながらも愛おしそうに見つめる黒部川。
そのまま、伊野尾は黒部川に支えられながら車に乗り込むと、助手席の伊野尾はウトウトと船を漕ぎ出した。
黒部川「伊野尾君、眠たかったら寝てもいいよ。」
伊野尾はぼんやりした意識の中「はい…」と呟きながら眠そうに目を擦る。
伊野尾は何とか目を開こうとするが、心地よい車の振動も相まってしばらくすると意識をとばしてしまった。
黒部川「伊野尾君。離さないよ…」
黒部川はぐっとハンドルを握り直す。
そして、隣で気持ちよさそうに寝息をたてる伊野尾を横目でちらりと見やった。
伊野尾「ぅう〜ん………」
薄っすらと遠い意識の底で感じる胸の不快感。
不快感に導かれるように意識が鮮明になってくる。
伊野尾「う゛っ…」
無意識に体が捩れる。
なのに寝返りをうつことができない。
何故か…
伊野尾「えっ？えっ！？なっなんで？！」
あまりの情報量にパニック状態の伊野尾は顔を強張らせ、腕を力任せに引き下ろそうとするが出来ない。
伊野尾の両手首に巻かれた黒いベルトから、無機質な鉄の鎖のびている。
そして鎖はベットの上部にある鉄の柵に通されており、伊野尾がベットの鉄の柵に繋がれた状態なのだ。
伊野尾が眉間にシワを寄せ、苛立った表情で鎖を引きちぎろうと力を込めて引っ張るがガチャンガシャンとベットの鉄の柵と鉄の鎖が音を立ててぶつかり合うだけでびくともしない。
黒部川「あぁ〜。伊野尾君、ダメだよ。そんな力任せに引っ張ったら。」
それまで激しく動かしていた手がピタリと止まる。
伊野尾を制止したその声に、伊野尾の顔からみるみる色が失せていく。
そして恐る恐る目線を下へ向ける。
伊野尾「つっ…………」
思わず言葉に詰まり、体をビクンと跳ね上げる。
目線の先に見えたのは、上半身裸の伊野尾の体を跨ぐように手をついて覆いかぶさっている、同じく上半身裸の黒部川の姿があった。
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作者名：サツキ | 作成日時：2023年11月7日 19時
